命 (新潮文庫)

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本棚登録 : 268
レビュー : 38
著者 :
ゆぴ。さん  現代小説   読み終わった 

本当に、本当に読み進めるのが辛かった作品。柳美里さんの作品は「ルージュ」しか読んだことがなく、今回授業の課題で書評を書くにあたり、柳美里さんの他の作品を読もうと思って手に取ったのが本作だったのだが、ただただ茫然としてしまった。「ルージュ」の透明感や煌めきの影は一切見られず、頁すべてに血痕がこびりついているように痛々しく、思わず何度か本を閉じた。
まだ二十歳になりたてで、結婚や出産は疎か死について漠然とした思いを抱えていた私に、この本はありのままの現実を鼻の先に突きつけて来た。

「風景の発見」というものがある。それは、風景はいつもそこにあるはずなのに、見ようとしなければ見えないもの、ということで、今回はそれが生と死となって浮かび上がった。人間は必ず死ぬ。それじゃあ、私たちは死ぬために生きているのかと。

出産の経験や死に対面したことがない私には、この本のレビューを書く資格などないのかもしれない。しかし、私の頬には気付けば涙が伝っていた。それは、感動や同情の涙ではない。「生きることへの恐怖」の涙だ。当たり前すぎて何も見えていない自分、のうのうと大学に行き、コンビニのおにぎりをかじり、カフェで友達と雑談し、一日を終える自分は、命を削って生きているのか。こうしてベッドに潜って携帯を弄り続けている間にも私は死に向かっているというのに。限りある人生を、どう生きればいいのか。もし病に侵されてしまったとき、自分には大量の薬を投与し、吐き気や眩暈と闘いながらもそれでも生きながらえる必要性と価値はあるのか、意味はあるのか。

そういうことを考えさせられてしまった。

レビュー投稿日
2012年10月29日
読了日
2012年10月29日
本棚登録日
2012年9月10日
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