八甲田山死の彷徨(新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (1978年2月1日発売)
4.25
  • (23)
  • (20)
  • (10)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 193
感想 : 28
4

一気に読む.史実を基にしつつも,著者が脚色した山岳小説になっているという.そうではあっても,この悲劇が一般に知られることとなったのは,この作品によってであり,記録小説としての価値は十分に認められるべきものであろうし,自分もまたそう思う.
「人間実験」と表現されるこの悲劇は,そもそもなぜやらなければならなくなったのか.日露戦争を見据えて軍首脳部の短絡的な発案と,階級による絶対的な権力構造とが生み出したと言えようか.その組織の脆弱さと責任者の不在(誰も処罰されなかったという)を目の当たりにする.これに参加することを余儀なくされた人々はなんとつらい思いをしたことであろうか.合掌.

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2014年5月24日
読了日 : 2014年5月23日
本棚登録日 : 2014年5月24日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする