主人公のマルコ・ダンドロは、中世の名門貴族に生まれ、ヴェネツィア公国の独立を守るため、誇り高い職務を全うする日々。そんな中突如、学生時代の親友アルヴィーゼ・グリッティが「恥じ入る乞食(ポーヴェロ・ヴェルゴニョーソ)に扮し現れ…。
周囲を魅了してやまないアルヴィーゼには、秘密があった。
再会し、マルコの「女友達」に会いに行ったり、学生時代に戻ったかのような楽しい時間を過ごすも、親友の顔はどこか晴れない。マルコがC・D・Xの極秘任務に就いてから、少しずつ親友の行動がわかり始め…。
時代小説、それも、2人の主人公以外はほぼ実在の人物で、時代背景、暗号通信など、作中で描かれている背景は史実になるのだそうです。
この時代独特の、貴族の誇りの高さ、宗教や国家の絶対性、嫡出子でない事による、帰属国家のなさ・貴族になれない事への葛藤、結婚の足かせなど、他国に占領される危険性の高い中での情報収集や潜入、交渉など、それぞれの人物が守りたいもののために真剣だった事が伺えます。
この時代だったからこそ、アルヴィーゼは誰も成し遂げなかった高い理想を追い求め、有能にも関らず、少しずつ不運が重なり、志半ばで農民達に殺されるというあっけない最期を辿り、プリウリの奥方も、キリスト教徒だから大丈夫だろうとマルコが安心していたのに、アルヴィーゼの後を追うように身を投げてしまいました。高い目標を持たなければ、正式な結婚をせずとも、家族としてちいさな幸せをかみしめて生きられたかもせれません。
最後、マルコは2人の子供である、娘のリヴィアとの結婚を決意しますが、その後2人は幸せになれたのか気になります。
- 感想投稿日 : 2016年12月20日
- 読了日 : 2016年12月19日
- 本棚登録日 : 2016年12月19日
みんなの感想をみる