『羊と鋼の森』を読んでいるうちに読みたくなって再々読。わたしの手元にあるのはすえもりブックス版だけれど、こちらのほうが新しいのでここにつけます。
読めば読むほどすばらしさがしみてくる本。
今回は、「二年前、よその町に住んでいた息子夫婦が亡くなり、急に小さな孫娘を引き取ることになったときに」というところを読んだときに、この老調律師の悲しみを思って胸がしめつけられるような気がした。
それでも毎日規則正しく、ていねいに暮らすワインストックさん。調律師とは、こういう気質を持つ人こそができる仕事なんだろうなということが伝わってくる。
デビーはそんなおじいさんの気質をまっすぐに受けつぎ、その仕事にあこがれている。それでも孫娘には、もっと華やかなピアニストになってほしいと願うワインストックさん。人間とは因果なものです。
そのあと、ピアニストもからんでの展開は、ひとつひとつすべてのエピソードがいとおしい。胸をつかまれたまま読み終えた。
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【2023.9.26 再々再読】何度も涙がこみあげてきた。
お使いにだしたデビーがなかなか帰ってこなかったとき、ワインストックさんが、何も手につかないほど心配してしまったのは、きっと息子夫婦の事故があったからだよね。2年前だからまだ記憶に新しいのだろう。淡々と描かれていて、はげしい感情などは記されていないのに、行間や余白にさまざまなものが込められていて、読めば読むほどぐっときてしまう。デビーへの愛情。それだからこそ抱いてしまう理不尽な希望。世界一の調律師でそのことに自分でも誇りを持っているのに、孫娘にはピアニストになってほしいという望みを捨てられないなんて、ばかばかしく思えるだろうけど、人間てそういうものなんだなあとも思えていとおしくなる。それを友情と尊敬で包みこみながらも、ほんとうにピアニストになりたい人しかピアニストにはなれないのだということをはっきりと伝えるリップマンさんもすてきだ。
- 感想投稿日 : 2016年6月19日
- 読了日 : 2016年6月19日
- 本棚登録日 : 2016年6月19日
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