嘆きの美女

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本棚登録 : 1174
レビュー : 208
著者 :
mirutanさん 文芸   読み終わった 

美女たちが美人であるが故の悩みや苦悩を語り合い、慰めあうサイト『嘆きの美女』。
ひきこもりで根暗で性格の歪んだ不細工な主人公・耶居子はそのサイトを荒らすことを生きがいにしている。

参加者の写真を撮ってネットでばら撒こうと、オフ会が開かれるケーキ屋で待ち伏せをしていたら、
事故に巻き込まれて美女たちの住む屋敷で同居することに。
そしてそのサイトの管理人ユリコは主人公の小学生時代の同級生だった。

美人ながらそれぞれ悩みとコンプレックスを持つ人たちとの同居生活の中で、
耶居子はしぶしぶ人間的な生活と社会とのつながりを取り戻していく。

ブスがだんだん綺麗になっていくというのはよくあるストーリーだけれども、
耶居子は大して綺麗にならない。
性格もキツイし、素直じゃない。

でも他の人の強さや弱さを素直に認め、自分以外の価値観を受け入れる柔軟さを取り戻していく。

ギャグみたいな展開だし、ひたすらぶっとんでいる。
あまりリアリティはない。
でも勢いで読んでしまえる文体と長さだから、こういう話もアリかなと。

そして元がアエラネットでの連載だったそうで、
連載時の2011年的なコネタがいろいろある。
芸能人の名前や食べ物、本のタイトルなど固有名詞バンバン使っているのもそのためかと。
ストーリー展開にもマッチしていると思う。
web小説だったら確かに面白かったかもしれないけど、
今回紙の本で読むとそういう時代感に少し冷めてしまった。

確かに掲載された瞬間はとてもフレッシュだったかもしれないけど、それは逆に旬を過ぎた瞬間古臭さの源になる。
十年前の写真を見て古いと思う感覚に似てる。
時代にフィットして最先端であればあるほど後から見ると古さが目立つ。そんな感じ。

だからこれはとても十年残る本ではない。
刊行は昨年末なのに、今でさえぎりぎり。結構寒い。
来年でも無理かも。

電子書籍で売って終わりにするのが潔かったんじゃないのか。
極端に言ってしまえばこの本は読み捨てられ消えていく類だろう。
そんな役割の物語にも価値はあると思うけど、そういう作品は紙媒体にはなじまないのではないか。
今後こういう傾向の本が増えていくとしたら、余計に紙の本は売れなくなってしまうのじゃないかしら。

ページを開かれなくなった本は悲しい。
それが想像できてちょっと切ない。
おこがましい言い方をしてしまえば、今私が読んであげてよかった。

今しか書けない本はパワーがあると思う。
でもそれはたった今流行している文化やタレントを使うということではないでしょう。
いい本は古くならないんだから、時代におもねることないのに。
内容よりもそんなことに考えがいってしまった。
なんだかな。

レビュー投稿日
2012年3月7日
読了日
2012年3月7日
本棚登録日
2012年3月7日
3
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