アンドロイドは電気羊の夢を見るか (講談社ワールドブックス 7)

  • 講談社 (1995年12月1日発売)
3.63
  • (5)
  • (6)
  • (12)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 80
感想 : 6
4

 坂口恭平さんが宮台真司さんとの対談の中で、著者の名前が出てきたことがきっかけで読み始めた本。ただの感染動機。結論から言えば、とても面白かった。人とロボットの境界線に挑んだ作品の一つだと感じた。読み終わった後、人は最終的には人によってしか癒されることはない、という著者のメッセージを受け取った気がした。また最終章を読んでいて一番驚いたのが、ストーリーの設定が「主人公が朝起きてから、夜までに起きた出来事」だったということ。どんだけ濃い一日なの、と突っ込みたくなった。
 舞台は第三次世界大戦後のサンフランシスコ。戦闘により地球は放射能を纏った灰に覆われ、死の星と化した。そのような中火星へ移住することが推奨され、人が火星で暮らしていく際の労働力としてアンドロイドの開発が進んだ。開発が進む中、知性を持つアンドロイドも開発・販売されていった。知性を持ったアンドロイドの中には主に反抗し、火星から脱出し地球で暮らそうとする者も出てきた。主人公のリックはそのような違法アンドロイドを狩る賞金稼ぎである。彼はアンドロイドと出会い狩っていく中で、うつ病の妻イランよりも女性らしい女性型のアンドロイドレイチェルと出会い、人間とアンドロイドの違いは何かという問に苦しみながら、仕事をこなしていく。
 本には5種類のキャラクターが登場する。人間、スペシャル(死の灰によって体を侵された障碍を持つ人々)、アンドロイド、動物、そして電気動物である。動物は本でどのように扱われているかというと、第三次世界大戦後、動物がほぼすべて死滅したため動物の値段は高騰し動物を飼っていることが人間にとって一種のステータスのようになっている。またそこにつけ込み電気動物(ロボットの動物)を扱う店も存在している。
 人間である主人公は、同じく人間であるうつ病の妻イランを女性として見ることができなくなっている。そのような中、"動物が欲しい"という一心でアンドロイドを狩り、金を稼ぐ。しかしアンドロイドを狩る中で上記のレイチェルに会い、結果的に異性の関係を持つ。アンドロイドと人間の区別ができなくなりながらも、アンドロイドを狩り続ける。その中スペシャルであるイシドアが主要キャラとして登場するが、その扱われ方は5種類の内下から二、三番目である。人間のはずなのに、途中アンドロイドよりも下の階層にいる存在として物語では扱われる。

つまり物語の序盤において、リックから見た実存のヒエラルキーは

1.動物
2.人間
3.スペシャル
4.電気動物
5.アンドロイド

のようになっていたと思う。それが物語が進行する中で

1.動物
2.人間 アンドロイド
3.スペシャル
4.電気動物

のように変化し、最終的には

1.人間
2.動物 アンドロイド スペシャル 電気動物

とヒエラルキーが変化していったように感じた。物語中リックは終始電気動物に対して嫌悪感を抱くが、最後はそれが無くなり電気動物を愛すべき存在へと昇華させている。逆に、賞金で購入した黒羊を終盤レイチェルに殺されるが、深い絶望は感じなくなっている。元々リックの中に存在したヒエラルキーが変化し、彼は彼の奥さんの近くですやすやと眠る。
 色んな便利なものや高級なものが世の中に生まれてくるが、結局一番大事なのは身近にいてくれる「人」の存在なんだな、と読み終わった後思った。

 レビューとは関係ないが、本のタイトルがなぜこうなったか疑問に思い少し調べたところ以下のサイトの文章を見つけたので掲載する。

-----------------------------------------------------------------------------------
旧約聖書では………

1)ヤコブ(イスラエル12支族の元祖)の二人目の妻
2)愛された妻(ヤコブは最初からラケル目当てだった、一人目の妻レアとはだまされて結婚させられた)
3)子供が産めない(後に授かる)
4)当然子供が産めないことを死ぬほど気にする(昔の女性はそうでした)
5)彼女の名前の意味は………『雌羊』

アンドロイドは電気羊の夢を見るか? では………

1)主人公リック・デッカードの愛人
2)当然一番愛されてるよね……(レイチェルはデッカードが一番愛しているのは黒山羊だと言いましたが)
3)アンドロイドだから子供なんて産めない
4)彼女も子供が産めないことを気にするくだりがあります
5)デッカードのお気に入りの動物は『羊』(羊、電気羊、雌黒山羊の順に飼う)
つまり レイチェル=電気雌羊 なんですね

http://www.diana.dti.ne.jp/~eigetsu/aphrodite/rachel.htmより
-----------------------------------------------------------------------------------

読書状況:未設定 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2013年2月4日
本棚登録日 : 2013年2月4日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする