人間を人間を見なさない、そんな出来事や事件は数多あって。
けれど、この事件では「自分がそれをしなければならない」いわば正義の代弁者的理由で、多くの人を殺したという点で気になっていた。
彼の言う「幸せな社会」とは、何を指していたのか、結局最後まで分からなかった気がする。
始終、「迷惑をかける」ことに敏感だったようだから、誰かが誰かに苦労を強いない、そんな社会を幸せだと言いたかったのだろうか。
そして、果たして、そうだろうか。
周りと「言葉が通じなく」なったと書いているけれど、強固な世界観に閉じ、誰の言葉も耳を傾けようとしない彼もまた、彼自身が忌み嫌う意思疎通の出来ない存在に近い、何かだとは言えないか。
そうした殻の中で、精神的な成長が止まってしまったようにも思うのだ。
すると彼の掲げる正義とは、現代社会に根差すものなんかではなく、ただの「イタい人」でしかないように思ってしまったのだった。
敢えて矮小化した言葉を用いたが、そんな物言いをしても事件に取り返しがつくわけではなく、ただ苦しい。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
2020年
- 感想投稿日 : 2020年7月23日
- 読了日 : 2020年7月23日
- 本棚登録日 : 2020年7月23日
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