こゝろ (角川文庫)

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本棚登録 : 4394
レビュー : 511
著者 :
mitsukiさん 2018年   読み終わった 

何回目かの再読。

カリスマホストの書評に「他の男に対して威嚇し、マウンティングを取りたい先生が、お嬢さんをそのための道具として結婚する、現代においては賞味期限の切れた話」というようなこと(かなり要約したがズレてないつもり)が書いてあった。

「高尚な文学作品」を、このように扱われると怒り出す人もいるだろうか。
かくいう私の前回のレビューにも、内容については割と似たようなことを書いていて、思わず、えっ、私こんなこと書いたっけ?と驚いてしまった(笑)

誰かが自分の人生を決めることが当たり前だった世の中から、自分が自分の人生を決めることの当たり前に移ってゆく。
先生とKがその先駆けだったとすると、「私」の時にはそれがもっと敷衍していたとも言える。
「私」にとって実父は田舎の悪習でしかなく、先生こそが新時代のお手本として、上・中は展開する。

しかし、先生もKも故郷を失った人間だった。
そういう意味で、二人は同じ「寂しさ」を抱えていたのではないだろうか。
先生はKを「人間らしく」するために奮闘するわけだが、その実、二人ともきれいなまま、自分として生きることを誰かに認められたかったようにも思う。
結局、それは恋という形で、お嬢さんに向かうしかなかったのかもしれない。

私はずっと、乃木大将の自殺と先生の自殺に何の因果があるんだろうと、疑問に思っていた。
時代の終わりって、何なんだろう、と。

乃木大将は、忠君という、誰かによって自分の人生を決める時代の象徴だったのだろうか。(言い方が難しいけれど)
先生とKもまた、そんな時代に抗おうとする一方で、個人として生きてゆくことの「寂しさ」を抱え続けてきたのかな。

一途すぎる二人の大学生と、友人を亡くして後もきれいであろうとする先生を見ていると、今回の再読は苦しかった。
死を選ぶことで解放される、そんなエンディングは人間に何を残すんだろう。

作品に賞味期限は、ないと思う。

レビュー投稿日
2018年12月28日
読了日
2018年12月28日
本棚登録日
2018年12月28日
5
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