宮内悠介作品の中ではお気に入りの一冊なのです。
単行本も持ってますが、文庫もあらためて購入して再読しましたー。
中央アジアに位置する、架空の砂漠国家アラルスタン。
他国との紛争で居場所を失った少女ナツキが拾われたのは「後宮」。そこは、単なる大統領の側室コミュニティではなく、まさに大学級の教育機関として機能していた。
個人的にはね、アラブを舞台としながら「後宮」を特務機関にしちゃう、この発想が好きなんです……。
ナツキが、アイシャが、ジャミラが、流行ファッションや美味しいご飯を取り巻いてキャッキャと語らう一方で、国を守るための戦略を練り、AIM(アラルスタン・イスラム運動)という反政府組織とも対バン張っちゃうという。
アラルスタンの大統領暗殺という大きな事件の中で、国の力を弱めず存続の道をどうにか体現していこうというテーマ。
そこに絡んでくる「雨」のキーワードも印象的なのですよねー。
砂漠地帯にとっては恵みの象徴、でもチェルノブイリを経験した人々からすると災厄の象徴。
アラブ地域は今なお、力のある国家によって翻弄され続けている。こうしたキーワードから、考えの違いを浮き彫りにすることで相容れなさをうまく表しているようにも思うのでした。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
2020年
- 感想投稿日 : 2020年12月13日
- 読了日 : 2020年12月13日
- 本棚登録日 : 2020年12月13日
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コメント 1件
さいたにさんのコメント
2020/12/17