アフターダーク (講談社文庫)

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本棚登録 : 12381
レビュー : 1081
著者 :
mitsukiさん 2014年   読み終わった 

20190807、五年越しの再再読。
以下エンディングまでのネタバレ含む、注意。
(過去二回のレビューはメモへ移動)




顔のない男とは、結局「男性」そのものなのではないかと思う。
白川は、一見、優秀なサラリーマンである。
妻との交流も出来、仕事でも能力を発揮する。
そんな白川の暴力性が、白日の元に晒されれば、きっと私たちは驚くのだと思う。

よく挨拶してくれたけど、まさか。
真面目な人だったので、仕事にストレスでも感じていたんでしょうか。
と。

そして白川は、日常的に暴力を振るっていたかは分からない。

だから、顔のない男とは、白川だけを指すのではないのだと思った。
高橋や、高橋の父、組織の男、コンビニの店員。
暴力性を男性に喩え、ある日、ぽっかりと空いた深淵に足を取られた時、コンビニに置かれた電話さながら、システムは牙を剥く。

それが、高橋と死刑判決を受けた男の共鳴であり、システムとしての法律に、高橋自身が関心を寄せるようになったのかもしれない。

そして、根源的というのか、理不尽な悪としての暴力を受けるのが、喩えとしての女性だ。
中国人の売春婦、そして浅井エリ。
浅井エリの眠りの原因を高橋に求める読みは、せっかくの夜明けを損ねてしまいそうなので、個人的には取らない。

ただ、エリは「お姫様であること」を脅迫的に求められた人物であり、その意味では男性的な暴力性の被害者だと言える。
美しく品があり、それに見合った人生を送ることを両親からも期待されてゆく道。

マリがそんな姉に距離を感じながら、「取り返しのつかないことをした」と最後に涙するのは、姉を置き去りにしたことを意味するのではないか。
つまり、「姉が姫なら、妹は秀才であること」というレールを自分だけが脱し、中国という境界の外へ出て行けてしまったことなのかなと思う。

マリは自分の家を離れ、闇の世界を通して、そういった象徴的な出来事や人物に触れていく。
「私たち」はもう少し俯瞰的に、彼女をキッカケにした社会システムのようなものを見通していく。

最後に、「思い出す」ことの大切さを別の本で読んだところなので、マリがエリのことを「思い出す」ことにも触れておきたい。

『アフターダーク』の世界では、多くの出来事が起きるわけではない。
けれど、マリがエリとの繋がりを「思い出す」、その一点に集約されているのだとすれば。
エンディングで、マリがエリの布団に入り、「取り返しのつかないこと」に言及し、キスをして眠りにつくことは、決してバッドエンドではないように思う。というか、思いたいのだ。

自分にとって、とても愛着のある一冊なので、随分勝手な考察になってしまった。
長々と失礼しました。

レビュー投稿日
2014年2月11日
読了日
2014年2月11日
本棚登録日
2014年2月11日
3
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