超越の棋士 羽生善治との対話

著者 :
  • 講談社 (2018年9月20日発売)
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本棚登録 : 85
感想 : 8
5

羽生さんの言葉が、回り回って自分自身の今抱えているものに、グサグサ刺さってくる良本だった。

絶対的な強さを誇っていた羽生さんが負けるという部分に、ある意味フォーカスしている流れはあまり好きではない。
もちろん、負けてどんな気持ちですか?みたいな部分を「超越」して、意味や目的を突き詰めすぎない境地を見せてくれるから魅力的なのだけど。

諦めること、和すること。
葛藤に対しては、目の前の一手に集中し、そこに闘いも何もない、その無心を呼び起こすこと。
でも、恐怖心に対しては、AIのように臆することなく一手を繰り出すことに、つまらない感じがしますけどね、とも話している。

鬱を患ったことのある筆者が、対話から癒しを得るように、羽生さんの「見えている」ようで「ぼんやりとした」言葉に触れていると、自分の抱えている物事も、ストンと落ちるような気がした。

この本のもう一つすごい所は、「雀鬼」と呼ばれた桜井章一さんのパートだ。
麻雀にのめり込むことを「腐る」と表現し、人間は皆腐って死ぬわけだから、その練習をしていると言う。

将棋には名局があっても、麻雀にはない。
勝つことに正義もなく、負けた人間の向こう側に自分が見えた。「何だよ、結局、俺が俺をやっつけてるだけじゃねえか」と気づき、寂しさを感じるくだりを読んで、自分まで辛くなってしまった。

「固い信念や意思というのは危ない。固いもの同士というのは、必ずぶつかりますから」

対象との境界が極限までなくなりながら、でも自分を保っていること、その自分とは何なんだろう。
感情すること、思考すること、なんだろうか。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 2021年
感想投稿日 : 2021年5月28日
読了日 : 2021年5月28日
本棚登録日 : 2021年5月28日

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