鍵・瘋癲老人日記 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (1968年10月29日発売)
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本棚登録 : 1186
感想 : 84
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夫と妻が書く、それぞれの日記を通して話は進んでいくのだけど……お互いに日記の存在は気付いているわけで「相手の日記を読むわけがない」と言いながら、「自分の日記は読まれている」とも思う。

こうなると、日記の何が虚構で、何が真実なのか。
書き手として、読み手として、騙し合いと探り合いをしている夫婦っていうのが面白い。

電子上であっても、この「鍵」の概念は変わらず、秘められているという、そのことに「秘めなければならない」ものが書かれているんだと詮索してしまうのが、人の常。

そして「秘めなければならない」ものなら書かなければいいのに、書いてしまうのも、人の常。

さて、この小説のさらに面白いところは、二人の娘と娘のボーイフレンドまでが絡んできて、この日記が読まれている可能性があるということ。

そういう後ろめたさを、さらに情欲のスイッチにさせてしまうところが、谷崎潤一郎らしいなぁと。

日記が一つの文学として非常な魅力を持っていることがよく分かる。
……のだけど、小学生の交換日記じゃないんだから「もう勝手にやっといてくれ」と投げ出したくもなる(笑)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 2020年
感想投稿日 : 2020年8月31日
読了日 : 2020年8月31日
本棚登録日 : 2020年8月31日

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