数学する身体 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2018年4月27日発売)
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本棚登録 : 1411
感想 : 95
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単行本が発売された時、岡潔を語るなんて(稀有な)面白い若者がいるんだな、と思っていた。
改めて文庫版を見てみると、小林秀雄賞受賞とある。なるほど。『人間の建設』だなー。

第一章半ばから第二章半ばくらいは、割と流してしまったけど。
チューリングと心と機械の話。
コンピュータが、人間の生活の中で密接に関わるようになると、それは単なるモノではなくなってしまうと締められる。

第三章からは、岡潔と情緒と数学の話。

「岡潔は常に、「自明(トリヴィアル)ではなく本質(エッセンシャル)」を追求する人である」

という一文を考える。
目で見えるモノの世界が、そのモノが秘めている本質とは必ずしも一致しないということか。
今、ちょうど美について考える機会があって、個人的な感想になるのだけど……。
人が自然持っている(はずの)感じる心。
けれど、なぜソレに対して感じるのかという所はその瞬間は明らかには分からない、のだと思う。

この場合、感じたことは本質なのだろう。
そして、その本質への帰り道を岡潔は数という世界を通して顕にしようとしたということか。
自分という身体を通して、本質に接続していく。
言葉にしたけど、言い切れていないような……。

「数学は零から」と「零までが大切」という対比は、バランスが危ういほどの深遠を感じる。

「自他の間を行き交う「情」の世界は広いが、情緒の宿る個々の肉体は狭い。人はその狭い肉体を背負って、大きな宇宙の小さな場所を引き受ける。その小さな場所は、どこまでも具体的である。」

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 2018年
感想投稿日 : 2018年5月27日
読了日 : 2018年5月27日
本棚登録日 : 2018年5月27日

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