初の田中慎弥。
クセの強い人なんだろうと思っていたら、やっぱりすごかった。
第二次世界大戦後に、アメリカが新たな日本を生み出し、自分たちがそこに居住したとしたら。
それまでの日本を旧日本と呼び、旧日本人に対して居住区を設け、行動に制限をかけたとしたら。
解説で触れられているように、「強国」はその意味で善なる統治を施行することに、疑問を抱かないものである。
恐ろしい小説と思っていながら、身近な所で『宰相A』の世界は存在するように思う。
小さな世界の我々が決めたことこそが、ルールであり、正義であるのだと。
その「普遍」に逆らうものを屈服させる悦びを、純粋に引き継ぎの少女は知る。
母の墓はどこにあるのか。
あって欲しいのか。あるはずがないのか。
自分はどこに還ってゆけるのか。
そして、ここはどこなのか。
つまり、自分は誰であったのだろう。
自身に流れるルーツなど、ある日唐突に何の証でもなくなるんだなと知った。
ディストピア小説って終わりは救いがなくて、いつも滅入る。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
2017年
- 感想投稿日 : 2017年12月6日
- 読了日 : 2017年12月6日
- 本棚登録日 : 2017年12月6日
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