騎士団長殺し :第2部 遷ろうメタファー編

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本棚登録 : 3741
レビュー : 550
著者 :
mitsukiさん 2017年   読み終わった 

以下、多大なるネタバレ。
注意。






ストーリーとしては呑み込める。

そこに在ったものを上手く説明することは難しい。

主人公自身の持つ何かと分かち難く、また先を示す指標となるべき存在として顕われた、騎士団長イデア。
しかしイデアを求め、慕っている中では、残念ながら物語が終わることはない。
イデアを主人公自らが抹殺することで、彼は次のステージへと進むことを許される。

そのステージとは、妹コミを捕らえて持って行ってしまった、致死的で理不尽な闇への挑戦。
「私」はコミの死以来、閉鎖的な空間に寄り付くことさえ出来なかったが、まりえを助ける為に自身の闇を乗り越えていく。

まりえがメンシキの家で対峙したモノとは、一体何だったのだろう。
それは主人公の描いた白いスバル・フォレスターの男のような影(純然たる悪)だったのだろうか。
それがクローゼットの扉を開けていたとすれば、まりえはコミのように、損なわれることになったのだろうか。
しかし、損なわれるとすれば、何を?
致死的な何か?

メンシキの家を脱することで大人に近付いてゆくまりえは、もう守られるべき少女ではなくなっている。
彼女は、次第にメンシキへの危機感を失わせ、むしろ魅力を感じてもいるような描写がある。

アンデルセン文学賞のスピーチ「影と生きる」からは、雨田父の生き方を彷彿とさせる。
ドイツという国が抱える歴史的な闇に、雨田父は本当の自分を影に損なわれ、また偽物である影を本当にして生きることを強いられた。
彼は「騎士団長殺し」を描いたことによって、影から本当の自分を救い出そうとしていたのだろう。
そうして、雨田父は本当の騎士団長殺しを目撃することにより、癒される。

非常に重いクライマックスを過ぎ、「私」は東北大震災以降をユズとむろの三人で過ごしている。
そこで起きた事実は、日本という国が隠してはいけない影であると言いたいのかもしれない。

ただ、メタファーとしての結末ではなく、私が読んだ村上春樹の作品の中では、ややハッキリ描かれた、良き結末のように思えた。

男は血を流すことで大人として完成された。
少女は少女のまま完成されずに抜け殻を残し、美しい女になった。

レビュー投稿日
2017年2月26日
読了日
2017年2月26日
本棚登録日
2017年2月26日
5
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