R帝国

著者 :
  • 中央公論新社 (2017年8月18日発売)
3.47
  • (72)
  • (119)
  • (160)
  • (45)
  • (13)
本棚登録 : 1705
感想 : 164
3

中村文則だなー!!
以下ネタバレ含む。




R帝国の一部が、Y宗国によって侵攻された。
そこで矢崎はアルファという敵国の女兵士と出会うのだが、彼女を通して、自国への反抗心を育みはじめる。
自国の国民を守るのではなく、国という透明な存在を維持するために犠牲にし、見捨てることの出来るシステム。
概念を生み出し、概念に喰われる私たちがいる。

筆者が巻末で希望の少ない作品というようなことを述べていた。
確かに、この作品の中で「正常」なまま生き残ることの出来る人物は少ない。
むしろ強大な暴力の嘲笑が響き渡りながら、幕を下ろす。まあ、そんな感じ。

半径5メートルの幸福のために、人間は真実を遠ざけようとする。
起死回生の勝利のために、人間は人間を盾にして時間を稼ぐことが出来る。
「見方」によっては、それは美談となり、それは凶悪犯罪にもなる。

そして、それを可能とするのが人間です、と。

ただ、チンパンジーと見做されている人間の中には、AIですら真似の出来ない揺らぎがあるはずだ。
自分を絶望で染めても仕方がない。
サキが立ちはだかる未来だけを信じたい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 2017年
感想投稿日 : 2017年10月8日
読了日 : 2017年10月8日
本棚登録日 : 2017年10月8日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする