夜想曲集: 音楽と夕暮れをめぐる五つの物語 (ハヤカワepi文庫)

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本棚登録 : 1263
レビュー : 151
制作 : Kazuo Ishiguro  土屋 政雄 
mitsukiさん 2017年   読み終わった 

作家として読んでみようと思う時は、学生時代に学んだこととして二冊必ず読むようにしている。
だから何と言うわけでなく、「これも読みましたよ」と言えると体裁が良いといった表面的な格好良さを求めてのことらしい(笑)

一冊目に『忘れられた巨人』を、二冊目にこの作品を選んだ。
短編が好きだからだと思う。
初めの「老歌手」を秋に読んで、それからずっと積み上げられていたのだけど、もう一度進めていくと、不思議と波長が合って一気に読みきれた。

最後の「チェリスト」は、才能も学もある若手チェリスト・ティボールが、チェロの大家だと言う貴婦人エロイーズに見出される話。
エロイーズは自分の才能を頑なに信じる余り、師の教えを間違っていると感じ、それ以来チェロには触れないことを信条としている。
自分には才能があるからこそ、汚されまいと断ち切ってしまう。
こういう話を何かで読んだような?

「夜想曲」と「老歌手」にはどちらもリンディという女性が出て来る。
解説の中島京子が指摘するように、このチャーミングで感情豊かなリンディを、作者は愛おしく描いているように思う。
どう見ても周りは振り回されているのだけど。

訳者あとがきに、水村美苗の『日本語が亡びるとき』に触れている箇所があったので、引用。

「イシグロのように、何か書けば必ず翻訳されるだろうという前提に立てるのは、水村の言う『普遍語』で書く作家のアドバンテージではあろう。そこに安住しないところに作家としてのイシグロの誠実さが見えるのだが、訳者としては、翻訳のことは翻訳者に任せ、英語の特性をとことん駆使した作品を書いてみてほしいという思いもある。」

レビュー投稿日
2017年12月31日
読了日
2017年12月31日
本棚登録日
2017年12月31日
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