ファーストラヴ

著者 :
  • 文藝春秋 (2018年5月31日発売)
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感想 : 517
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何をレビューしても、割と深くネタバレになる話なので、読む側で選択を。



娘の父殺しの真相サイドと。
彼女の臨床心理士と弁護人の因縁サイドと。
三人が抱える闇が、それぞれ作用し合っていく。

娘は父親との、息子は母親との出来事を、昇華しきれないまま大人になっていく。
その間、救われることのないまま経過してしまったのが娘の環菜で、ある一点において救われたのが臨床心理士の由紀だと言える。

その意味で、由紀にとって弁護人・迦葉と我聞の兄弟との出会いは大きい。
迦葉については、同じ傷を抱え過ぎて上手くいかないパターンなのだけど、多分それは必要なことだったんだろうな。
傷付いた由紀を抱擁出来た我聞さんについては、ただただ、神!と言わんばかりの男。尚且つ、イケメンときた。
つまり、王子様なのだと思う。

んー。
そう読むと、この小説って性的に傷付いた美男美女の話になってしまったりする。
美しいからこそ、変な目に遭う機会が多いのでは?というのは、偏見。
だけど、そう思わざるを得ない理不尽な仕組みが、この世界にはあるとも言える。

これが「醜い」加害者と、「美しい」カウンセラーの話だったら?
いや、反対に冠を付けたって構わないのだけど。
そこに同じ女性としての共感はあっただろうか。

そのことと当事者が負う心的外傷を、本来は結びつけるべきではないのかもしれない。
そして、由紀と迦葉のように、傷付いた者同士であるから、開かれた道もある。
それは分かる。
でも、「君は背負い過ぎているよ」なんて言って、傷付いた妻を優しく包み込んでくれる我聞さんが、実は最も背負っていたんだという結末は、理想的で哀しくもあるよね。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 2018年
感想投稿日 : 2018年6月10日
読了日 : 2018年6月10日
本棚登録日 : 2018年6月10日

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