インストール (河出文庫)

著者 :
  • 河出書房新社 (2005年10月5日発売)
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2020年にインストール。

綿矢りさを何冊も読んでるのにインストール。

私は「一大ブーム」を起こした小説を敢えて避けるようにしているのです……(村上春樹でさえ『ノルウェイの森』はかなり後回しにしたし、『永遠の0』に至っては未読)

が。

先日、高橋源一郎さんの『大人にはわからない日本文学史』(なぜかブクログに登録されてない)を読んだ際、綿矢りさについて一章を割いて語っていて、ようやく手に取ることに。

そして。解説やったんかーい。とツッコんだ。

高橋源一郎さんの引用に引用を重ねるのだけど、

「その時綾香の耳の上にがんと高速のボールがぶつかってきて、さらさらの髪が一瞬くらげのように上へ浮かび上がり、開いた口から歯のかみ合わせがずれたのが見えた」

の一文がお気に入り。
文章のテンポが否応なくスローにさせられる感じ。
なんだこれ。いい。

「思っていたよりも気が強いみたいだからな、あいつ。そこまで考えてから、頰づえをついた城島の顔が、身体が、ぶわりと火照った」

これもね。語りと視点の時間差みたいなのがあって、いいな。うん、いい。

どちらも「You can keep it.」から出したんですけどね、「インストール」も、楽しい。
テトリスのキーホルダーなんか、デスクトップの持ち運べない重さのパソコンなんか、もう忘れられてしまいそうな遺物なのに。

私たちの往還は何も変わってなくて。

朝子の唐突なフェードアウトに、かずよしくんの冷笑に、雅さんと「雅」の屈託なさに、お母さん達の不安と戦慄に、やっぱり共感するんだなぁ。

なんだろう。今の方が癒着しちゃって、ヴァーチャルさえ地続きになっているのかもしれない。
いやあ。
いいですよ、インストール経年比較読み(笑)
ぜひ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 2020年
感想投稿日 : 2020年8月12日
読了日 : 2020年8月12日
本棚登録日 : 2020年8月12日

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