トラウマ文学館 (ちくま文庫)

  • 筑摩書房 (2019年2月8日発売)
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本棚登録 : 213
感想 : 18
4

前作の『絶望図書館』がすごく良くて、同じ頭木弘樹さんの編集であるこの本を購入。

前に書いたかもしれないが、今までアンソロジーってなんか中途半端な感じがして苦手だった。
けれど、テーマに沿って集めるということが、こんなに技巧的(という表現が合っているかは分からないけど)で面白いものなんだと衝撃を受けた。

直野祥子「はじめての家族旅行」
まさかの漫画スタート。
かつ、「なかよし」って児童向け雑誌のイメージだけど、この話はハードすぎる。
はじめての家族旅行が決まって、大喜びで準備をする主人公の女の子。
船が出る段になって、アイロンの電源を消し忘れていることに気付くのだが……という話。
ここだけを書くと、確かにそうなんだけど、女の子の内に色んな想いが駆け巡るシーンと結末のオトしどころは、確かにトラウマ。

筒井康隆「走る取的」
この話をしていると「それ、確か、世にも奇妙な物語でやってたよ」と言われ、その人の中にも残っているんだと驚いた。
バーにやってきた相撲取りを見て、常連客二人がこっそりからかうのだが、相撲取りがじっと見つめてきて、怖くなる。
店を変えようと外に出ても、ひたすら取的は無言で追いかけてくるのだった。
シチュエーションが訳分からんけど、怖すぎる!
私にもちょっと経験があるんだけど、自分が標的になっていると分かりながら、ただひたすら逃げるしかない、という切迫感と恐怖たるや。

ドストエフスキー「不思議な客」
『カラマーゾフの兄弟』中の挿話らしい。
こんな話あったっけ、と、もはやうろ覚え。
自分の卑怯さから、軍団を辞め、聖職者になるつもりでいる「私」は周囲に賞賛を受けるようになる。
そんな彼の元に、秘密を抱えた男が訪ねて来る。
男は秘密を抱え続けることに苦しみ、大衆の前で懺悔するべきかと考える。
真実の話が、真実と受け止められる訳ではなく。
偽りの話と知りながら、それを楽しむこともある。
夏目漱石『こころ』の先生を彷彿とさせた。

他に……

原民喜「気絶人形」
李清俊「テレビの受信料とパンツ」
フィリップ・K・ディック「なりかわり」
大江健三郎「運搬」
フラナリー・オコナー「田舎の善人」
深沢七郎「絢爛の椅子」
白土三平「野犬」
夏目漱石「首懸の松」※『吾輩は猫である』より
ソルジェニーツィン「たき火とアリ」

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 2019年
感想投稿日 : 2019年3月2日
読了日 : 2019年3月2日
本棚登録日 : 2019年3月2日

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