ロマンティックあげない

著者 :
  • 新潮社 (2016年4月22日発売)
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感想 : 43
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テイラー・スウィフトにはじまり、テイラー・スウィフトに終わる、フェミ的メッセージがところどころに散りばめられたエッセイ。いやいや、私たちには松田青子もいたわ、と頼もしいかぎり。
エッセイははじめてですが、小説(『スタッキング可能』と『英子の森』)は2作ともすごく好きでした。

「フェミ曲ミックス Vol.1」
松田氏の定義によると、フェミ曲とは、「これまでの社会通念、固定観念などを変えていこうという強い意志が見える曲である。例えば、あみんの『待つわ』(私待つわ いつまでも待つわ たとえあなたが ふり向いてくれなくても)、都はるみ『北の宿から』(着てはもらえぬセーターを 寒さこらえて編んでます)などは、非フェミ曲である。これに対し、「待つな!」「編むな!」と歌い上げているのが、フェミ曲である。」とのこと。
たしかに『待つわ』や『北の宿から』的な価値観が「女性の美徳」とされたのではたまらない。世の中的にこういうのが美化されたり理想化されたりしているのは問題だが、でもまあ、これはあくまでも歌の世界のことであって、もはや化石化した価値観であり、現実世界の女子たちはみな、ふり向いてくれない人をいつまでも待つはずもなく、さっさと次に進んでいたり、着てももらえぬセーターを編んだりするような真似はせず、あんたが着ないなら別の人にあげるわとか、自分で着るわとか、そもそも編むより買ったほうが早いわとか、そんな感じなんじゃないかな?
とはいえ、松田氏も指摘するように、こういう「非フェミ曲」を日常的に聴くのはやはり精神衛生上よくないと思う。『待つわ』や『北の宿から』を日常的に聴く、というのもかなりレアなケースかとは思うが。。非フェミ曲=「堪え偲ぶ系」ということでいえば、最近の流行歌でもまだまだ結構あるのかも、非フェミ曲。あと個人的に付け加えたいのが「偽フェミ曲」。西野カナとか。若い女性から絶大な支持!とかいうけど?? 妄想上の「あなた」を持ち出してひたすら「可愛い私」をアピールしている、ナルシズム全開の「偽フェミ曲」じゃないか!「受け身」で「待ち」な姿勢は、本質的には変わりません。

とにかく、価値観の刷り込みは危険です。
「フェミ曲ミックス」のナンバーは、私も知ってるおなじみの曲もあり、ちゃんと聞いたことなかった曲やまったく知らない曲もあり…。テイラー・スウィフトはこっそり聴いていたのだけど、なんとなく気恥ずかしくて人には言えなかった。でもこれからは声を大にして言おう、「テイラー・スウィフトが好き!」

その他、海外ドラマや映画のことなど。知らないタイトルや名前がたくさん出てきたので、スルーしたり、メモったり。他は主に、日常の中で気になったことなど。フィギュアスケート愛も。どこか皮肉的なユーモアが漂う、あの独特の語調(松田節?)で語るものだから、こちらはニヤニヤが止まらないし、ときには吹き出してしまったりで、電車の中で読むには向かない一冊。
元気が出ました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: エッセイ
感想投稿日 : 2016年8月7日
読了日 : 2016年8月7日
本棚登録日 : 2016年8月7日

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