主人公丸部道九郎は、叔父が買い取った古い屋敷『幽霊塔』で、絶世の美女松谷秀子に出会う。長年止まったままだった時計塔の動かし方を知っていたり、屋敷について妙に訳知りな秀子に一目惚れする道九郎。叔父もまた秀子を気に入り、養女に迎えると言い出した。面白くないのが道九郎の許婚浦子で、何とかして秀子の正体を突き止めようとあらゆる手を講じてくる。だがことごとく失敗に終わり、挙句他殺体となって発見されるに至る。当然容疑は秀子にかかり、道九郎は彼女を救う為奔走するのであった。
と大筋はこんな感じでいいと思うが、二転三転のトンデモ展開に彩られたストーリーは単純な一方で込み入っていて、やりたい放題でいいなあと羨ましくさえある。何しろ道九郎がバカ過ぎて大変なのだが、バカ過ぎる故に面白い。秀子が美人じゃなかったら絶対動かなかっただろうことも容易に想像がつくバカさ加減。だがそれがいいとは言えないし主人公としてどうかとは思うのだが、冒険活劇みたいな展開はスピーディで楽しい。
この小説、登場人物が日本人の名前なので、読み始めは洋行している日本人の話かと思っていたのだが、純粋にイギリスを舞台としたイギリス人の話だった。読み終わったので調べてみたら、オリジナルではなく翻案小説だった。そういや『ハイジ』とかも最初の翻訳は日本名だったし、そういうものなのか。原作も翻訳されているので、こちらも読んでみたい。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
文学
- 感想投稿日 : 2013年6月27日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2013年6月27日
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