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  • 青空文庫 (2005年11月12日発売)
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感想 : 5
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高利貸しの末造の妾になったお玉は、無縁坂に家を与えられて暮らしていた。そこを折々通り掛る学生の岡田と、軽い挨拶を交わしたり、鳥篭に入り込んだ蛇を退治してもらったりするうち、恋心を抱くようになる。岡田の方も満更ではないのではと思い、実際何となく心を通わせそうな気配が仄見えてきたある日、末造が所用で遠くへ出かけるのをいいことに、岡田を家に誘おうと考える。女中に休みをやって実家に帰してやり、準備を整えて岡田を待つお玉。しかし岡田は近く洋行に発つことが決まっており、語り手に(そういやこれ聞き書き形式だった)報告したり、友達に会って雁を獲ったりしているうち、お玉には会えずじまいとなる。というような事を、後日彼女本人から聞いたという語り手。でも色気のある関係じゃないよと断りおいて話は終わる。

『雁(がん)』と『雁(かり)』とどっちだっけと思っていたら、なんと同じ字でしかも同じ鳥らしい。紛らわしい。
何故か何でも知ってる語り手だが、実はお玉本人から聞いてたという。どういう状況でそうなったのかは分からないが、恨み言の一つも聞かされて然るべきだろう。妾といっても現代で考えるそれとは随分趣を異にするようだが、末造がクズなのはガチ。むくいをうければいい。『文学ト云フ事』で見た予告編とはだいぶ違ってて、誰を中心に考えるかで読み方が随分変わるものだなと面白い。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 文学
感想投稿日 : 2013年8月5日
読了日 : -
本棚登録日 : 2013年8月5日

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