忘れないようにあらすじをまとめてみる。
完全にネタバレなのでご注意下さい。

蓆や沓を売る商売の帰り道、家で待つ母の為二年間節約して貯めたお金で貴重な茶葉を買い求めた劉備玄徳。その夜泊った旅籠で黄巾賊の襲撃に遭い、命からがら逃げ出すも、道端のお堂で将来への誓いを述べているところを黄巾賊の馬元義と甘洪に捕まって、荷物持ちをさせられることになる。反意を隠してのらりくらりと立ち回っていると、只者ならじと見た馬元義にYOU黄巾賊に入っちゃいなYOとスカウトされる。故郷で母がひとり待っているからと断るが、出世して金とか送ってやればいいと諦めない馬元義。そこへ仲間の李朱氾が追いついて来て、劉備が泊っていた宿を襲撃した話をし、茶を持っている男を取り逃がしたと言い出す。その部下丁峰が茶を買った男の姿を覚えていたため、隠していた茶を奪われる劉備。ついでに亡き父の形見で家宝でもある剣も取られて、キレかけるも敵わず、賊らが休む為立寄った寺の柱に縛り付けられてしまう。寺はかつて黄巾賊に襲われ、人もおらず喰うものもなく、死に掛けの老僧がひとりいるだけだったが、劉備はその僧に助けられ、県の城長の娘鴻芙蓉と美しい白馬を託される。老僧はひと目見たときから劉備の資質を見抜いており、劉備と芙蓉が逃げて行くのを確認すると、黄巾賊何するものぞ的なことを言って舌を噛み、寺の高塔から身を投げる。だが逃げた二人は間もなく追っ手に捕まり、どうせ死ぬなら男らしくと啖呵を切って身構える劉備。あわやというところへ駆けつけたのは、黄巾賊に身をやつして反撃の機を窺っていた、かつての鴻家の旧臣張飛翼徳であった。敵を千切って投げて皆殺しにし、奪われた茶葉と剣を取り戻してくれた張飛に、劉備は芙蓉と馬を預け、命を救われた礼にと家宝の剣を差し出す。かくて劉備は茶を護って剣を失い帰途につく。
さて久々に帰った実家は母親が帰りを待っていた以外はほぼ空っぽ。聞けばここにも黄巾賊の被害が及んでおり、家財も食糧も全て黄巾賊への対抗のために徴発されてしまったという。それでも息子が無事戻ったことと、土産の茶にたいそう喜ぶ母。翌朝、それでは清水を汲んで茶を沸かそうという段になって、母は息子が家宝の剣を佩いていないことに気付く。剣はどうしたかと問う母に、これまでの経緯を説明する劉備。すると母は烈火のごとく怒り出し、劉備が守り通した茶を川の流れに投げ捨ててしまう。茶などのために家宝を失うとは、中山靖王劉勝の玄孫ともあろう者が今の暮らしに妥協して心も土民に落ちたかと嘆く母。母の言葉に打たれ、つい低きに流れる私が間違っておりました、何があっても誇りは高く持たねばならなかったと反省する息子。正直血統妄想に聞こえなくもないが相互いに納得して丸く収まる親子ゲンカ。
それから暫く時を経るも止まない黄巾賊の暴虐に、街では兵士を募集する高札を掲げる。それを眺めて相変わらずただぼんやりしている劉備に話しかけた巨漢があった。彼はなんと以前命を救ってくれた張飛翼徳で、劉備を見込んで今こそ決起の時だと喧しい。行きがかり上、実は自分は中山靖王劉勝の玄孫で、然るべき時を窺ってはいるのだと語る劉備。やはりそうであったかと合点した張飛は、家宝の剣を劉備に返す。劉備は張飛の剣を彼に返し、ふたりは近いうちの再会を約束して別れる。
張飛はこのことを一刻も早く義兄に伝えんと関門を出ようとするが、既に時間切れのため閉ざされている。門兵に見下されてからかわれたとはいえ、何人かを殺害して無理矢理外に出る張飛。そのまま五、六里離れた童学草舎に着くと、関羽雲長をたたき起こして事の顛末を語り、劉備んちに行こう今すぐ行こうと忙しない。張飛の意に反して関羽は冷静で、そんな話を簡単に信じるな、短慮も大概にしろとノリが悪い。ふて腐れた張飛はそのまま寝てしまい、翌朝もいつも通り...

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  • あらすじ続き。地味な展開。

    さて、三人で世の中をどげんかせんといかんと起ち上がってはみたものの、人も軍備も金もない。人については、劉備が発布したメンバー募集の高札を意気に感じた若者らが集まってくれたが、軍隊としての体裁を整えるにはまだ遠い。そんな折、近所の峠を馬をたくさん引いて通り掛る者ありとの知らせ。そいつを何とか手に入れられまいか、しかし襲撃するわけにも行かないしと、張飛は端からタダでゲットするつもりで悩む。そこで関羽に相談すると、じゃあ自分が交渉してみようと出かけて行く。勿論こいつもタダ前提。得意の弁舌を弄して何とか言いくるめようと、まずは軍隊を組織した経緯から語って行くと、何事か相談し合っていた二人の商人蘇双と張世平は、そんな訳ならと曳いていた五十頭の馬を差し出す。さすがに驚いた関羽が理由を尋ねると、張世平は、関羽が悪人ではないと見たこと、義兵を挙げるに時機を得ていることを上げ、何よりその力で黄巾賊に対する自分達の恨みをも晴らして欲しいからだと説明する。黄巾賊にみすみす奪われるよりも、志のある者に渡すほうがはるかに益があると言う張世平。更には遠い将来、天下を平定した折充分に利をつけて馬の代金を払って貰えば即ち利殖にもなると抜け目ない。関羽に案内されて劉備に会うと、彼の人物を見込んで、馬に積んでいた他の荷の一切をも献上し、この馬匹金銀がいずれ莫大な利を生み、その利が困苦の底にいる万民にも分け与えられるよう、それがまた自分の商魂であると語る。張世平に経理の重要さを説かれたこともあって、彼を仲間として留め置きたいと考える劉備らだったが、張世平は戦の中にいる勇気はないからと辞退。だがまた役に立つ時がくれば参上すると言い残し、何処ともなく去っていく。多分ここまでで一番頭が良く人格もまともな人、颯爽退場。
    そんなこんなで軍備が整い人も増え、軍律と教練と徳望と他人の親切の賜物たる二百人程の小軍が出来上がった。関羽は太守劉焉のもとへ赴き、劉焉が兵を募集していることについて尋ねる。劉焉が然りと答えると、この地にあって恩恵を受けているのに、今の状況でただ無為に過ごすのは忍びない、劉玄徳を盟主と仰ぐ我々は太守劉焉のもと報国の義を捧げたいと売り込む。劉焉は二つ返事で大歓迎し、ついでに張飛がしでかした暴虐も許してやってくれと言われて了承する。何かひどくね?
    ともかくこうして劉備は母にしばしの別れを告げ、府城へ発ったのであった。

    再読了日:2013年12月4日

読書状況 いま読んでる
カテゴリ 歴史

『チャイルド44』『グラーグ57』に続くシリーズ三作目にして完結編。
秘密警察を辞め、工場長に転職したレオ。妻のライーサは教師として評価を受けており、ニューヨークで行なわれる親善の為のコンサートを引率することになる。コンサートに不穏なものを感じたレオは、ライーサにニューヨークには行かないように、行くなら自分も同行すると言うが、前職の事情もあり叶わない。ニューヨークに旅立ったライーサ達のコンサートは成功するが、国連本部前でのデモに巻き込まれた形でライーサは命を落とす。娘のエレナはそのデモに関わっていたが、彼女も真実を知らぬまま帰国、その後家族は離れ離れになり、レオはライーサの死の真実を突き止めるため亡命を企てるも失敗。アフガニスタンで秘密警察顧問として無為な毎日を送る。やがてレオの前に訪れる最後のチャンス。CIAとの取引を経てアメリカに亡命したレオが見た真実とは?

上・下巻読了。
大きな喪失と救済、ラストに至るまでの派手な筋立ては、三部作の最後を飾るに相応しい。だが、なんか面白くなかった。冗長というか、こんな長くなくてももっとすっきり面白く出来るんじゃないか。確かにどれも欠くべからざるエピソードなのかもしれないが、登場人物がまとまらずぶつ切りの印象が強い。伏線と言うよりは、起こった問題を放り出して次に行ってしまうような感じ。翻訳も何だか読みづらかった。そしてタイトルの『エージェント6』に至っては、タイトルに持って来るほどの重要性が感じられなかった。ちらちらと見え隠れしていた影に、終盤でやっと辿り着くとかって展開なら分かるのだが。せめてエレナが日記に登場する人物を数字で表記するというのだけでも、もっと前に出すべきだった。Amazonのレビューではかなり評価が高いのだが、何か読み方間違えたかと思うほどに、私には合わなかった。と言うか誰もナラについて触れてないのはあまり好かれるタイプのキャラじゃないからか。
そういやレオって前作でパン屋になろうかなとか言ってなかったっけ。

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読書状況 読み終わった
カテゴリ ミステリ

作家三浦しをんが、様々な女性達に仕事についてインタビュー。物欲やオタク心や感性を揺さぶられつつ、素敵なお話ありがとうございました、みたいな感じ。いや面白いんだけど、これを三浦しをんの著作と言っていいのかどうか。まあいいか。知らない仕事の話は面白い。それが女性の立場なら、イメージしているのとは全く違う話が聞けたりしてなお良い。インタビュイーがみんな真面目で真摯でチャレンジャブルなところに要らぬコンプレックスを刺激されたりもするが、それぞれが苦労したり躓いたりしながら今の場所に到達し、これからも進んでいくのだろう。
ところで私は三浦しをんという作家(著作ではなく)が何となく苦手なのだが、これを読んで、自分と似ているところがイヤなのだなと気付いた。私もそこに行きたかったのになって僻みもあるのだろう。こういうとこなかなか直らないな。立派な人を見習ってとか思うのは嫌いなのだが、この本のインタビュイー達のように、前向きになれたらいいなと思う。

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読書状況 読み終わった

大学の読書サークル『バベルの会』と、直接或いは間接に何らかの関わりを持つ主人公達により語られる連作ミステリ。
被害者でもありまた加害者でもある彼女達は、薄い紗を通しているように現実感を持たない。一面効果的なようにも思えるが、人物造形の浅さは否めない気がした。その為、登場人物が披露する知識は、この話の為に調べたような印象を受ける。もともとの作者の知識だったとしても、マニアックに偏りすぎてリアリティがない。もっと言えば中二by とはいえ大時代的な設定や仕掛けは魅力的だし、淀みなく読めた。
ひとつ引っ掛かったのは、ポーかなんかの小説を読んで、日本はほぼ火葬なので生きたままの埋葬など有り得ないと言っていた事なのだが、私の地元では近年まで普通に土葬の習慣があった。下手したら今もあるかも。膨大な読書量と知識を有する設定のキャラの台詞だっただけに、瑕疵として目立った。

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読書状況 読み終わった
カテゴリ ミステリ

次期アフガニスタン大統領と目される女性政治家の半生を綴った自伝。壮絶且つ別世界過ぎて圧倒される。
自分は宗教や政治とはほぼ縁がない(と思っている)人生なので、正直なところ想像が追いつかないのだが、それでもタリバン支配や911テロ、アルカイダなんてのはニュースにより耳慣れているので、全く未知の世界というわけでもない。生まれや人の縁に恵まれているとはいえ、生後すぐに炎天下に放置されたのを始め、事件や不運は絶えない。だがそこで挫けず、決して甘えず、強い誇りと意志を持つ彼女が国を動かすのは自明であり間近なのだろう。遠すぎて見習える気にすらなれないが、取り敢えず私も私に出来ることをやろう。

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読書状況 読み終わった

第二次世界大戦中、神戸の古い洋館に閉じ込められ、娼婦として生きるナオミ。彼女の死と再生を、客や彼女自身の感覚に纏わる体験で綴る。五感シリーズの集大成と言うだけあって、突出した感覚の描写はさすが。割とトンデモ設定というか、薬の効果というだけでは弱いところに説得力を持たせている。ただ、癖なのかわざとなのか分からないが、種明かし的な展開になってからは同じような話を何度も繰り返すので非常にくどいし飽きる。もっとシンプルに説明出来る話なのにと思う。しかもあれだけ周到に準備した末の行動なのに結局うまく行ってないし。で何だったのかという読後感。どうにもスッキリしないのは、現実離れしているからというだけではないだろう。

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読書状況 読み終わった
カテゴリ ミステリ

思い込みやしがらみを全て取り払って行った末にマッハの速度で走れるようになった主人公、成雄。孤高の精神性を持つ彼が、同じように速く走るランナーや、後に恋人となる女の子との出会いを通じて何か変わるかと思いきや何も変わらない連作短編集。

鬣って結局何だったのさ。思いつくまま書きたいことを書き散らしている印象。ライトノベルだしなあと思ったら『群像』に載ってたらしい。あれって純文学寄りの雑誌じゃなかったんだ。
大人に成る機会を得られないまま成長していく少年は社会的に問題があるが、本人は気にしていないので狭い世界でそれなりに上手くやっている。細かいことを超越して生きるのは容易ではないが、少年時代には誰もが望むことであり、成雄はこうなれたらいいのにと夢想するそのままが描かれている。

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読書状況 読み終わった
カテゴリ 短編集

芥川賞候補作となった短編集。五編を収録しているが、前後の繋がりはない。相変わらず圧倒的なスピード感とリズム感。
何かの話の続きとか一部分なのだろうと思われるものがあり、理解はしづらいが、惜しげもなく繰り出されるトリックやその反証が小気味よい。キャラクター達は皆何かを喪い、だが代わりに何を得ることもなく、基本的に問題は解決しない。でも不思議とすっきりした読後感。

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読書状況 読み終わった
カテゴリ 短編集

嫌いなタイプの主人公だったので、読んでる間中イラついていた。
イメージ的には、リネンが好きで『おうち』が好きでひらがなで喋ってなぜか度を越した内股で、勿論『お野菜』『おうどん』とか言ってそうな女。
私の性質によるのだろうが、この話から読み取れることは何もない。

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カテゴリ 文学

主に家族の関係を主題にした短編集。よく分からない話でも妙な説得力を持っている。力技で納得させられてしまうというか。読む力を試される作家だと思う。表題作は分からないと言うかまあどうでもいいが、『我が家のトトロ』がほのぼのして良かった。直接的な暴力という形ではないが、内外で生じるいろんな力により絆を試されるような出来事がいくつかある。『トトロ』を知らない日本人がいるかどうかは分からないが、そういう人にもある程度の説得力はありそうな『普通』の家族の話。一転殺伐とした『スクールアタック・シンドローム』でも家族の絆が描かれる。こんな父親イヤだが、強烈に何かを残せるのはこういうタイプなのだろう。それが悪い方に行かなければ成功だ。
それにしても福井県はおそろしいところだなあ。

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読書状況 読み終わった
カテゴリ 短編集

製薬会社に勤めるサラリーマンの遠藤は、大した実績も上げられずリストラ対象になっている。起死回生のチャンスを求めてインドネシアの小さな島に渡った彼は、ワヤンと呼ばれる催淫効果を持つキノコを手に入れる。一発逆転と思って帰った日本では、会社自体が吸収合併のため消えていた。適正ゼロの部署へ移動か、整理解雇かを迫られた遠藤は、査定担当のメイベルにワヤンの話を持ちかける。遠藤とともにキノコの効果を確かめたメイベルは、ワヤンを培養して売り出す為に会社を設立。だがそのスポンサーであるスタンレーは、ワヤンの持つ睡眠効果をメインに、債権として流通させることを考える。かくて量産されたワヤンは世界に出回り始め、経済界を巻き込んで行く。

エコノミックファンタジーと言える展開は少しくどいが面白かった。しかし中盤以降、畳むのを急ぎすぎたのか分からないが何だかおかしな展開に。前半からするとどうも違和感が拭えない感じがした。経済小説がライトノベルになってしまったような。ワヤンが世界中で評判になっているのに、もともとそれがあったインドネシアの島が沈黙しているのも不自然なのでは。いくら未開の地とはいっても交通機関はあるし、英語を話せる人間もいるのだから、追って来そうなものだが。遠藤は真面目で賢いが特に魅力がある風には書かれてないので、いきなりメイベルが臨床試験をと言い出すのも唐突過ぎる。心の交流みたいな場面がないので、子供欲しいとか言うのも、えーそうだったんだーと思ってしまう。事後に始まる愛もあると言うより、情が移ったと言う方が合ってる気がする。女の本能だとか男に言われてもねえ。全体になんかこう、違和感の残る小説だった。そういやタフってどうなったの。

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カテゴリ ファンタジー

自身を含めた世の中を冷笑的な目で眺める三造。肥大した自意識と自己呵責が巡る、特に解決も気付きもない話。これ中島自身の事なんだろうなと思う。こういうところ誰にでもあるし、自分でも分かったような顔して自分に突っ込み入れたりするけど、人がやってるの外から見るときのいたたまれなさよ。もうこれ中学二年の国語の教科書に載せて必修にしたらいい。『山月記』より更に露骨で、クラスの何人が打ちのめされることやら。

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カテゴリ 文学

パラオに伝わる昔話。村の長老から奴隷のようにこき使われていた男は、ある日長老と自分が逆転したかのような夢を見る。細部に亘りリアルな夢を見続けた彼は、現実でも生気を取り戻していく。一方長老もまた、自分と彼が入れ替わった夢を見ていた。夢の中での苦役に耐えかね、日々弱っていく長老。下男が見ている夢の話を聞くに及び、自分が夢の中でどんな辛い目に遭っているか訴える。しかし下男は、そんな辛さは疾うに知ってますが何か?という顔。そりゃそうだ。夢が幸せなほど現実が辛いというセオリーをひっくり返す衝撃。『うつし夜は夢、夜の夢こそまこと』というアレか。違うか。

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カテゴリ 文学

『嘘、そして沈黙』の二匹目の泥鰌を狙った邦題だと思っていたが、どうもその続編らしい。とはいえやはりひどい邦題。
ヒロインがほんとバカすぎて嫌悪感しか抱けない。こういうタイプの女が一番嫌いなんだよ。今旦那と元彼の間で揺れて、今旦那が酷い目に遭ってる最中に元彼と焼けぼっくいに火とかほんとおめでてーな。
そして本編もさることながら解説が本当に酷い。
隅から隅まで本気で腹立たしい本だった。

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カテゴリ ミステリ

学問に秀で、将来を嘱望される安井仲平。彼の容姿のまずい事もまた同様に評判であった。仲平はお佐代という嫁をとり、淡々と日々を暮らし、やがて一生を終える。

一言で言って地味な話。仲平の縁談話は、最初はお佐代の姉お豊に持ち込まれたものであったが、姉がきっぱりと断ったのを、妹が自分が嫁ぎたいと申し出てまとまった。話はそこから姉妹の関係とかそれぞれの本心とかにシフトするかと思いきやそんなことはなく、姉はその後一切出てこないし、妹の心理描写も皆無。むしろそのエピソード何だったのと思うくらいだ。タイトルも安井仲平物語とかにしたほうがいい。鴎外にとって女性って何なのかな。

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カテゴリ 文学

ふと起こした親切心から、生後間もない赤ん坊を預かることになった夫婦。母親とは連絡が取れず、貧乏な上に夫は肺炎で寝込み、にっちもさっちも行かなくなった妻はとうとう探偵社に母親捜索の依頼を出す。それがきっかけで赤ん坊の両親が判明し、ついでに夫とその父親との和解も成立、肺炎も治ってやれめでたし。

現代だったらすわ誘拐事件だと思うが、当時でもこんな話は有り得ないんじゃないか。自分の身一つままならないのに、半端な親切心など起こすから面倒なことになるのだ。って話。違うか。でも殺伐とした話ばかり読んでいると、全く犯罪がらみでないことにほっとする。

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読書状況 読み終わった
カテゴリ 文学

大型ショッピングセンター『タイニー・タイニー・ハッピー』ことタニハピで働く人々と、その恋人や友人についての連作。夫婦関係や恋愛問題を軸に話が展開していき、ある話での脇役が次に主役を張ったりする群像劇。

SCの名前で『タイニー・タイニー・ハッピー』って、文法がどうとか以前に長すぎる。私なら多分タニタニって呼ぶ。
基本的にはみんなラブラブで、ダメになってもすぐ代わりが現れるようなリア充集団。彼女がいながら既婚の女友達のことが好きだったり、彼氏がいるのに成り行きでつい他の男とホテルに行ったり、無意識の振りして他人の男にコナかける女とか、トラウマ気取ってその実女叩きしたいだけの奴とか、全てがサラッと書かれているが本当は結構面の皮の厚い奴らだ。勿論人にはいろんな面があるし、自分に火の粉がかからないならそんなの別にどうだっていいのだが、私的にはちょっとどうかな、と思う。キャラ造形にしても例えば『小柄で舌足らずのゆっくりした喋り方のせいで子供のような印象を与えるが、実はしっかりしていて料理上手、家事にも仕事にも自分にも手を抜かない女』ってそりゃどこの二次嫁だ。これで乳でかけりゃ完璧超人だわ。この小説に出てくる女性キャラって、タイプの違いはあれど『女に嫌われる女』というところが全員に共通していると思う。そりゃ私が女嫌いなだけだろうと言われりゃその通りだが、この小説自体は嫌いではない。まあ可もなく不可もなくという意味でだが。恋愛小説好きな人なら気に入るんじゃない?という読後感。

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カテゴリ 恋愛小説

日本人の父とフィリピン人の母の間に生まれた少年トシオ・マナハンは、闘鶏師を生業とする祖父と共にフィリピンの片田舎で暮らしている。日本人との混血であることを意味する『ジャピーノ』という呼び名には、若干の差別意識があるようだが、本人は『事実だからしょうがない』とあまり気にしていない。彼が住むガルソボンガ地区の奥には、彼しか道順をを知らない『虹の谷』という場所があり、ゲリラ兵士のホセが身を隠しながら戦い続けている。トシオが13歳の年、金持ちの日本人に嫁いだクイーンことシルビアが里帰りし、虹の谷への案内役として不本意な形で雇われる。それを切っ掛けのようにして、トシオや周囲の人々、ガルソボンガ地区全体に至るまで、運命の歯車は軋み始める。歪な状況の中、逞しく成長していく少年の物語。

初の船戸与一。国際的ハードボイルド小説のイメージが強く、読みにくいかと思って手を出したことがなかったのだが、この小説に関して言えば誤った認識だった。簡単に言うとすっげえ面白かった。一人称が『おいら』だったり、読み手に語りかけるような書き方は通常なら苦手というか嫌いでさえあるのだが、全く気にならなかった。むしろ『フィリピンの片田舎に暮らす子供』の目線で語るには最適。トシオの目が見ている世界は決して広くはないが、とても深い。どちらかと言えば過酷な人生だが、トシオは常に冷静で、子供ながらに強い信念を持って生きているので自分を見失うことがない。でも自分は無力な子供だということを知っているので、辛ければ泣くし失敗した時には自らを責める。他人の気持ちを考えることの出来るやさしさを持ち、厳しい境遇でも捻くれず、立ち上がるときは立ち上がる。なんだこれ。モテるわ。私がガルソボンガ地区の少女だったら惚れてる。更にカッコイイのがトシオの祖父で、彼はもと抗日人民軍の兵士だった。今は過去を封印し、孫と共に闘鶏師として暮らしているが、理不尽には屈せず、とても田舎の爺さんとは思えない知性や意志の閃きを見せる。爺っちゃん惚れる。覚悟を貫き通した最期は、予想できる展開だったとはいえホセやナカノが死んだときよりもショックが大きい。個人的にはナカノ救出は成功して欲しかった。ラストでトシオはメグを連れて虹の谷へ行き、そこで結ばれた(この言い方嫌いだな)後に、谷の名前の由来となった丸い虹を見る。ホセが『希望』と『誇り』と名付けた二羽の鳥が飛び立ち、少年の未来を暗示して話は終わる。それは決して平坦ではないが、鳥の名前と同じように、希望と誇りあるものである筈だ。だがまあそれはそれとして、メグがもう処女じゃない件だが、クイーンに会ったらすぐにばれちゃうのでは。しかも相手が誰なのかも見破りそう。どうすんのかな。でも横浜はいいところだよトシオ。普通に暮らしてれば、だけどな。

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カテゴリ 冒険小説

音に聞こえた美人女優の紫玉。旱の夏、旅の興業の合間の不可思議な出来事。
美しいものに対しては、ただ美しいというより他にないと思っているが、鏡花を読むとそれ以上の言葉があることが分かる。しかも尋常でないほどに。かんかん照りの夏、婀娜な美人の着物や道具の粋、さっと吹く風に散る水の冷たさ、木陰の涼やかさ、全てその美しさをただ美しいという以上に表している。言葉を知っていて、そして理解しているというのはこういう事だ。それが及ばない為に良く分からない箇所も実はあるが、真夏に読むにはうってつけの作品。紫玉が嵌めている指輪ひとつの表現だけでも爽やかな涼しさ。

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カテゴリ 文学

高利貸しの末造の妾になったお玉は、無縁坂に家を与えられて暮らしていた。そこを折々通り掛る学生の岡田と、軽い挨拶を交わしたり、鳥篭に入り込んだ蛇を退治してもらったりするうち、恋心を抱くようになる。岡田の方も満更ではないのではと思い、実際何となく心を通わせそうな気配が仄見えてきたある日、末造が所用で遠くへ出かけるのをいいことに、岡田を家に誘おうと考える。女中に休みをやって実家に帰してやり、準備を整えて岡田を待つお玉。しかし岡田は近く洋行に発つことが決まっており、語り手に(そういやこれ聞き書き形式だった)報告したり、友達に会って雁を獲ったりしているうち、お玉には会えずじまいとなる。というような事を、後日彼女本人から聞いたという語り手。でも色気のある関係じゃないよと断りおいて話は終わる。

『雁(がん)』と『雁(かり)』とどっちだっけと思っていたら、なんと同じ字でしかも同じ鳥らしい。紛らわしい。
何故か何でも知ってる語り手だが、実はお玉本人から聞いてたという。どういう状況でそうなったのかは分からないが、恨み言の一つも聞かされて然るべきだろう。妾といっても現代で考えるそれとは随分趣を異にするようだが、末造がクズなのはガチ。むくいをうければいい。『文学ト云フ事』で見た予告編とはだいぶ違ってて、誰を中心に考えるかで読み方が随分変わるものだなと面白い。

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カテゴリ 文学

学生の頃から成績優秀で才知に長けた主人公が官職に就いて渡ったドイツですったもんだのあげく自分のせいで精神に異常をきたした身重の現地妻を捨てて出世の道を選び帰国する話。とこう書くと酷い話だが本当にそういう話。舞姫って踊り子さんだったのか。境遇からすると多分ストリッパーかそれに近い職業なのだろう。エリスはあまりに無垢な娘のようだが、知らない人に親切に話しかけてもらったからっていきなり父親の葬式の金貸してくれとか、ちょっとどうかと思う。『パラノイヤ』を発症するにしても、腹に子供いるのに男の裏切りを知ったからってそんな完全な人事不省に陥るだろうか。もしかしてもともと頭がちょっとアレな娘なんじゃないか。文語体なんで読み落としてる箇所がありそう。とはいえ豊太郎がたいへんなクズなのには弁護の余地はない訳だが。

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カテゴリ 文学

お馴染みピーターラビットのおはなし第一話。牧歌的なほのぼのした童話だと思っていたら、いきなり父親が人間に捕まってパイにされたとかいう過去が判明して思わず頭を抱えた。しかもピーターVS人間の手に汗握るチェイスがメインで、ちっともほのぼのしない。つうかピーターって害獣じゃん。かわいい挿絵でイメージ先行していたが、読んでみなけりゃわからないものだ(当たり前)。

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カテゴリ ファンタジー

聞き書き形式の怪談話。語り手が学生であった頃、同じ下宿に住む先輩から聞いた怪異譚。先輩は真面目に学問に励みコミュ力も高くイケメンで実家は金持ちというリア充だが、司法試験に何度チャレンジしても合格しない。本人はもう諦めて実家に帰るつもりだといい、語り手である後輩にその理由を打ち明ける。試験中に毎回現れる白髪の女、訳を知っている風な実家の父、彼に思いを寄せる下宿の娘など、道具立てはいろいろあるが全てが解明されないまま終わる。スッキリしないが、そこがいかにも怪談らしい。

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カテゴリ 文学

プライドが高すぎたあまりに虎になってしまった男、李徴。ヒトと虎との心の境を行きつ戻りつするうち、かつての友と再会する。自らの詩業と妻子の行く末を友に託し、李徴はもう二度と会うまいと別れを告げるのだった。

プライド高すぎて虎になる(比喩でなく)って何やねんと思ったが、読んでみてかなり腑に落ちたというか身につまされたというか。中学生以上で自分で何かを表現しようとする人間なら、必ずと言っていいくらいこの『尊大な何か』を持っていると思うが、それが虎にまで成長してしまうかどうかは人それぞれ。虎にならずに済んだと思う一方、せいぜい猫かと複雑。

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