魚が食べられなくなる日 (小学館新書 か 18-1)

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  • 小学館 (2016年8月1日発売)
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2013年に世界銀行が、世界の2030年までの漁業生産の予測をしている。世界全体で24%の増加で、どこの国も増加しているのに日本のみが10%のマイナスとなっている。日本漁業の衰退は世界の中でも特異的となっている。他方、ノルウェーで最も成長している産業は水産業。この10年間でのGDPの増加分の42%が水産業によるものとなっている。彼我の差を鋭く分析し、今後の日本の進むべき道を示す。
漁業問題に限らず、今、日本は至る所で同じ課題に直面している。昭和の時代は、人口増加と経済成長によって、社会のほぼすべてのセクションが成長し続けた。問題を先送りしていれば、いつの間にか時間が解決してくれた。しかし、今後は、人口も経済も縮小していく中で、問題を先送りにしていれば、問題解決に使える資源が、そもそもなくなっていってしまう。変化の痛みは一瞬だが、変化をしないことの痛みは、じわりじわりと効いてくる。大切なことは構造的な問題に迅速に取り組む勇気を持つこと。戦後の日本社会には、変化に反対していれば既得権が守られてきたという歴史があり、それが甘えの構造を生んでいる。人口縮小、高齢化社会という厳しい現実から逃避するのではなく、状況変化に迅速に対応していくことが求められている。目を背けたくなるような現実ほど、放置しておけば致命傷となる。迅速かつ適切、大胆に舵を切る勇気を持たなくてはならない。日本が生き残る道は、成長を前提としたこれまでの枠組みから、縮小を前提としたより効率的で生産性の高い枠組みに社会を変革していくこと。肝に銘じたい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 社会
感想投稿日 : 2016年11月6日
読了日 : 2016年11月6日
本棚登録日 : 2016年11月6日

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