表徴の帝国 (ちくま学芸文庫)

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本棚登録 : 743
レビュー : 51
制作 : Roland Barthes  宗 左近 
mizugucciiikaoruさん  未設定  読み終わった 

まるでみじん切りのように、表徴の帝国の住人[つまり日本の人びと]の行為が徹底的に分節され、それらを舐め回すように分析が施されていて、少し異様にさえ感じる箇所もあるけれども、これがこの人のフェティシズムなのだなと思った。

でも、ときどきトレース(書写)したくなる部分もある。たとえば、日本の天ぷらについて述べた「すきま」と題された節の冒頭など。

料理人が生きたうなぎをつかまえて、頭に長い錐を刺し、胴をさき、肉をはぎとる。このすみやかで(血なまぐさいというよりも)なまなましい小さな残虐の情景は、やがて《レース細工》となって終る。ザルツブルグの小枝さながらに、天ぷらとなって結晶したうなぎ(または、野菜やエビの断片)は、空虚の小さな塊、すきまの集合体、となってしまう。料理はここで一つの逆説的な夢、純粋にすきまからだけでできている事物という逆説的な夢を、具現するものとなる。この料理の空虚は(しばしば天ぷらは、空気でできた糸毬といわんばかりの球となっている)人間がそれを食べて栄養とするためにつくられているものであるだけに、いっそう挑発的な夢なのだが……。(p 41)

実際にこんな表現が口をついて出てくる人に出合ったら、なんて理屈っぽい人なんだと思うかもしれないが、自国の文化について言及されるときに限っては、これくらい緻密に描写されない場合は文化について振り返りもしないし、その特異性について改めて考えることもないかもしれないと思い、ちょっと感心した。

レビュー投稿日
2012年10月10日
読了日
2012年11月1日
本棚登録日
2012年7月4日
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