修善寺の大患と言われる、漱石が胃潰瘍の悪化から人事不省に陥ったときの体験談『思い出す事など』。他に二葉亭四迷や正岡子規との交流記など7篇。
漱石は、幼年期に養子に出されたり戻されたりの不安定な家庭環境を過ごし、その後は留学するものの、当時を振り返って「ロンドンで暮らした2年間はもっとも不愉快」とまで言い切るほどのストレスを抱えて、人間不信に落ち入り引きこもりになったりしています。神経がまいって胃がやられるのも無理からぬところですね。
しかし、大病して死の淵がら戻ってきてくれたことで、『こころ』をはじめとする10年の作家生活の後半に書かれた作品を読めるわけで、壮絶な吐血との戦いに打ち勝ち、よく帰ってきてくれたと思いました。
こういうものを読むと、大病前後の作品の変化を感じ取りながら、まだ読んでいない作品も読みたい気持ちが強まります。『硝子戸の中(うち)』もそうですが、漱石はエッセイも良く書けているなあと感心しきりです。
その他、二葉亭四迷のこと『長谷川君と余』と、正岡子規のこと『子規の画』は、漱石の目から見た知らない面を知る事ができ、とても興味深い内容で、この2篇も読めて良かったです。
余談ですが、岩波文庫の小説は「〇〇作」、随筆は「〇〇著」などと表紙・背表紙にあって、小説とそれ以外の区別が分かりやすくていいですね。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2023年10月8日
- 読了日 : 2023年10月7日
- 本棚登録日 : 2023年10月4日
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