中国哲学の研究者である著者による「儒教」について解説する本。
儒教の基礎的な内容から、発生から現代に至るまでの過程について述べられる。内容は硬いが、そこまで難解というわけではなく、入門書としては最適な本だと思う。
日本では儒教は名前だけは知られているが、その実はあまり理解されていない。単なる倫理や道徳を説くものと誤解されている側面もある。
しかし、著者によれば儒教とは「礼教性」と「宗教性」を複雑に折り込んだひとつの体系であるという。
儒教の発生母体となった「原儒」とは、死者となった祖先の魂を依代を使って現世に再召喚するシャーマン的な役割を果たす役職だった。
これが祖先崇拝、親への敬意、子孫を産むことといった「家族倫理」の形成にまとまっていき、これは「孝」と呼ばれるようになる。自分の死後、現世の依代となる子孫に降霊をしてもらう必要があるからだ。
そしてこの理論化・体系化の進展を大幅に進めたのが孔子であった。さらにこの家族倫理・社会倫理の上に宇宙論・形而上学論を重ねたのが朱子による「朱子学」である。
儒教は知らず知らずのうちに日本人の死生観や習慣・儀礼に溶け込んでいる。故にこれを理解しておくことは重要なことである。
またこれを合わせ鏡にすることで仏教、道教、キリスト教の洞察ができると言って良い。
しかし儒教を体系的にまとめた読みやすい本というのは中々ない。その意味で本書は貴重なものだと言える。
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- 感想投稿日 : 2023年5月7日
- 読了日 : 2023年5月7日
- 本棚登録日 : 2023年5月7日
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