1919年1月にミュンヘンで行ったマックス・ヴェーバーの講演記録。
ドイツが第一次世界大戦に敗れて数カ月しか経っていない時期に行われた講演で、この内容もそうした時代性に規定されざるをえない部分が垣間見られるが、その政治と向き合う態度を説く論理は現在にも通じるといえるだろう。いや、むしろこの講演で抽出される政党、ジャーナリスト、政党人、政治姿勢は現在の日本政治を基としているのかと見紛うばかりの様相であり、時代を超えて読まれるべき作品だ。
中でも、ラスト30ページほどは政治と向き合う姿勢・倫理が論ぜられており、本書を通して最も力説されている部分であるが、巻末解説に丁寧に概観されていて理解もたやすい。
政治とは権力であり権力は暴力と結びついたものと達観した上で、政治家は情熱・責任感・判断力の資質が特に重要で、目的のために手段を選ばず結果責任を負うために悪魔と手を結ぶこともあるが、「それにもかかわらず!」と言い切る人間のみが政治を「天職」とできるとしている。
時代に規定された一番の部分をあえて言うならば、ヴェーバーは10年後に敗戦直後のドイツが行き着いた先を見極めた上でもう一度議論したいと述べているが、政治倫理の源泉と発露次第ではその後のドイツ(そして世界)が辿る歴史に結びつくことを考えると、愚衆・愚政治家(心情倫理家)との対置だけでは不十分だったいえるだろう。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
社会学
- 感想投稿日 : 2012年6月3日
- 読了日 : 2012年6月3日
- 本棚登録日 : 2011年6月28日
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