陰謀の日本中世史 (角川新書)

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本棚登録 : 901
レビュー : 70
著者 :
mkt99さん 新書   読み終わった 

陰謀論で溢れかえる巷のトンデモ歴史観を、歴史学の視点からバッサバッサと痛快に斬って捨てる歴史マニア向けの心得本です。
以前より私も歴史のトンデモ話には眉をひそめていた一人ですが、何で歴史学からの批判が無いのかなあと思っていたら、やはりアホらしくてまともに取り合ってられないということでしたね。
ですがたとえアホらしくても、学界と一般大衆をつなぐ共有観念としてこのような取り組みは必要だと思っていたのですが、氏のようにある程度名が通った学者が徹底的に斬って捨ててくれたことで、とても良かったと思いました。

日本中世の話がメインテーマなのでいまひとつ一般の人にはわからないトンデモ歴史もあったと思いますが、この時代はNHK大河ドラマでよく取り上げられる戦国時代を除き、あまり知られていない部分なだけに割と言いたい放題の分野であったとも言えます。
なので、トンデモ歴史自体が少なくて言った者勝ちのようなところがあるのですが、あと学界自身でも学説としてそういう傾向がよく見受けられるようで、『第六章 本能寺の変に黒幕はいたか』より前の時代ではむしろ研究史整理的な論述も結構あって、これはこれで割と楽しまさせてもらいました。

氏が言う陰謀論には法則があって、いちいちもっともなことだと頷けることばかりなので、歴史オタクや小説とかからのニワカファンの方はよくよく注意した方が良いでしょう。
・最終的な勝者が全てを予測して状況をコントロールしていたと考える。
・結果から逆行して原因を引き出す。
・事件によって最大の利益を得た者が真犯人と考える。
・挙証責任を批判者側に転嫁する。
・因果関係の単純明快すぎる説明。
・論理の飛躍            などなど。

私も山岡荘八原作の小説とかドラマとかを観ていて、たいがい全てを予測した動きをとっている人がいるので、苦笑してしまったことが結構あります。まあ小説だからいいですけどね。
井沢元彦なんかはもっとひどくて(結構、氏とバトルしているようですが)、「学説」ぶって古い古い学説をこれでもかといたぶり、最新学説をさも自分が考えた説のように振る舞い、怨霊と最大受益者だけで歴史がまわっていて、細部の証明は批判者に求めるということで、歴史学者はアホらし過ぎて誰も相手にしていなかったのですが、こんな非生産的な相手にも世の中全体の情報リテラシーのレベルアップに向けてよく付き合っているなあと感心してしまいます。
あと、氏がよくやり玉に挙げていたのは、立花京子とか明智憲三郎とかですが、自分も立花京子の『信長と十字架』を読みましたが、確かにあまりにもアホらし過ぎて沈黙が支配してしまうのですが、これを誰も批判できない会心の学説だと思ってしまうところが、トンデモ歴史を唱える人たち共通の快楽なんですね。
ちなみに『信長と十字架』では信長の盛衰の背後でシナリオを描いていたのはバテレンだったという話ですが、当時私はそれならバルカン星人黒幕説を唱えようかなと思っていたのですが(笑)、氏もそれなら宇宙人黒幕説でもよいのでは?と書いてあったので、やはりこのあたりの感覚は共通だと思い少し嬉しくなりました。(笑)

今後は氏の専門外になるとは思いますが、最後に触れていた近現代史における歴史修正主義者どもの与太話もバッサバッサと斬ってみて欲しいなあ。

レビュー投稿日
2019年8月24日
読了日
2019年8月16日
本棚登録日
2019年6月29日
15
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『陰謀の日本中世史 (角川新書)』のレビューへのコメント

夜型さん (2019年8月26日)

mkt99さん、こんばんは。
いい本ですねえ。呉座先生の活躍っぷりは目覚ましいですねえ。
百田氏も井沢元彦氏も本郷和人氏も彼の手によればバッサリでした。
お邪魔しました。

mkt99さん (2019年8月31日)

夜型読書人さん、こんにちわ。
コメントいただきありがとうございます!(^o^)

そうですね。この本はこれまで歴史学者が敬遠してきたようなことを、目下活躍中の新進気鋭の歴史学者が痛快に斬って捨てているところが良いですね。
まだまだ斬って捨てて欲しい方は何人もいるのですが・・・。(笑)

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