卍(まんじ) (新潮文庫)

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本棚登録 : 2196
レビュー : 239
著者 :
mkt99さん 小説など   読み終わった 

谷崎の変態異常性欲小説として有名(!)な本書ですが、自分としては、葛藤する恋愛心理や策略のド派手さ、どこまでも果てしのない疑心暗鬼、そして、誰もが陥っていく性愛の強欲ぶりが特に目を引き面白かったです。
とかく女性同士の性愛の方が脚光を浴びがちですが(自分も見学したいですけど(笑))、本書の本質からするとそんな異常性欲も可愛らしいものになって見え、むしろ、強欲ぶりと、それに伴う駆け引きというか策謀というか策略の凄まじさの方に圧倒されてしまいました。
性愛に取りつかれてしまった面々は誰もが真面目でもあり、誰もがねじれているようにも思え、一体全体、どういう駆け引き具合になっていて、結局、誰がどうしたいのかがまるで掴めないようなドロドロの愛憎劇に、こちらの頭もドロドロになってしまった感もあります。(笑)
つまるところ、このドロドロ劇の中心にいたのは美少女で処女(?)の光子であり、光子も含めて皆が強欲な性愛に翻弄されていたのですが、こうした泥沼から抜け出しひと皮剥け新たな段階に昇華できたのはやはり光子で、こうしたストーリー展開は美少女崇拝の谷崎の美的感覚の真骨頂であったともいえるでしょうね。
登場人物の誰もに驚かされる人物設計となっていて、「女の腐ったような」綿貫や語り手の園子夫人のハズ、それにお梅どん等の行く末を考えると、最初にレズに目覚めた語り手の園子夫人が一番真面目で正気であったのではとさえ思えてきます。(笑)
本書の構成がまたふるっていて、園子夫人が先生(谷崎を擬していと思われる)に振り返り語るというスタイルで全てが大阪弁で語られていて、凄まじい愛憎状態にもかかわらず、こうした趣向により、弾んだ調子とともに柔らかで温かくオブラートに包み込まれたような丸みを帯びた語り口がクッションとなって、なぜか読者に安心感を与えていたともいえます。光子が園子を「姉ちゃん」と呼ぶ様などはどこか可笑しみすら感じさせます。このような異常性愛もなんだ大したことはないのではないかという・・・。これは谷崎の術中に陥っていますかね?(笑)
谷崎が大阪に行きたての頃の作品ということで、後年のスマートな(?)異常性愛を基調とする作品と比べると少しごちゃごちゃ感があるように思えます。以降、より純化路線(性愛の)を歩んでいくことになるのでしょうね。(笑)

レビュー投稿日
2015年10月12日
読了日
2015年10月12日
本棚登録日
2010年1月2日
8
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『卍(まんじ) (新潮文庫)』のレビューへのコメント

nejidonさん (2015年10月13日)

mkt99さん、こんにちは(^^♪
そうそう、ものの見事に陥っておりましてよ!
さてわたくし、長年秘密にしてきたのですが、だいぶ前に映画化されたものを観ました(笑)
若かりし日の若尾文子さんの、まぁ美しいこと可愛いこと。クラッときますよ。
そして岸田今日子さんの魅力的なこと。
このふたりだけももう十分なほどの作品でした。
カメラワークも相当にねちねちしてて、スタッフさんは楽しかっただろうなぁと推測できましたよ。
で、肝心の性愛の描写はとても穏当なものでした。
でも公開当時は「けしからん!!」だったのかもしれませんね。
谷崎が何を描きたかったのか、ようやく理解できる年齢になりつつあるので、カミングアウトしてみました(笑)。
本の方はあいにく未読ですが、機会がありましたら映画のほうもどうぞご覧あそばせ。

mkt99さん (2015年10月14日)

nejidonさん、こんにちわ。
コメントいただきありがとうございます!(^o^)/

そのような秘密をひた隠しにされていたのですかー!(笑)
これを機にゲロって、すっきりされたことと思います。(笑)

若尾文子の美しさは想像できますが、自分としては岸田今日子も含めて、お歳を召された頃のイメージしかなくて、その二人の親密シーンを考えるとちょっと何かコワい感覚もあります。(笑)
しかし、若い魅力的な二人が文字通り絡み合うシーンなどはさぞや楽しかったことでしょうね!(^o^)
DVDを見つけたら、観てみたいですね!

原作もあまり性愛の描写はありませんで、初期の頃に二人が鏡の前で抱き合うシーンが唯一の艶めかしい箇所といえるかもしれません。大半は自己中心的な強欲がらくる疑心暗鬼と壮烈な駆け引きの心理描写が物語の中心でして、背景はアブノーマルですが、どちらかというと昼ドラの脚本のような気もします。

自分が一番面白かったのは、誰もが強欲に絡んでいく物語進行でして、終盤には「○○よ、お前もかー!」と思わず心の中で叫んでしまいました。(笑)
処女(?)の美少女の進化も見逃すことはできません。

若尾文子、ちゃんと進化していますかね?(笑)

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