三四郎 (新潮文庫)

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本棚登録 : 5323
レビュー : 491
著者 :
mkt99さん 小説など   読み終わった 

明治も最終盤の頃、大学に入るために上京してきた小川三四郎の、学業は兎も角も、次第に広がる交友関係に、そこはかとない片想いもあって、まさに学生生活を謳歌するちょっぴりほろ苦い青春物語!
その後の漱石の小説では、狂おしいばかりの主人公の懊悩と葛藤が描かれるようになりますが、この『三四郎』はどちらかというと、田舎から上京して右も左もわからずに、人並みに悩みはするけれど(笑)、ぼぅ~と流されてあまり深く物事を考えていない、いらいらさせられる系の主体性の無い青年のようですね。(笑)
物語の進行は流石にドラマ仕立ての場面構成になっていて面白いです。それに三四郎の周りを彩る個性的な面々もなかなか魅力的です。「明治」というと欠かせない広田先生や野々宮のような学究肌の人物や、三四郎も惚れた「明治」の女らしい美禰子、そして、学生時代に必ずいるがさらにそのおっちょこちょいぶりに「明治」の拍車が掛かるかき回し屋の与次郎など、三四郎を取り巻く登場人物が魅力的すぎたが故に、逆に三四郎の影が薄くなっているほどです。(笑)あと、「偉大なる暗闇」とか「迷羊(ストレイシープ)」とか物語の要所を締めるキーワードが、持って回った言い方となっていて、これも「明治」のインテリ層の雰囲気が味わえるなかなか楽しい趣向でした。(笑)
交友関係の展開はいいとして、三四郎の片想いの行方が気になるところですが、相手の言動の三四郎なりの解釈や、すれ違いぶりが、どうしても三四郎のぼぅ~とした性格ぶりと重ね合わさって、描写が不十分と思えてしまうのはその後の作品群と対比してしまうからなのでしょうね。
ところで、この作品ではさかんにイプセンのことが語られていますが、「明治」の新しい青年像への漱石なりの指針のひとつだったのでしょうかね?

レビュー投稿日
2014年5月31日
読了日
2014年5月29日
本棚登録日
2014年4月11日
14
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『三四郎 (新潮文庫)』のレビューへのコメント

佐藤史緒さん (2014年6月3日)

mkt99さん、こんにちは!

>三四郎のぼぅ〜とした性格
漱石作品の主人公は大抵ぼんやり君ですね(笑)
『坊っちゃん』はコミュ障、『三四郎』は草食系男子、『それから』の代助はニート、『こころ』の先生はひきこもり&メンヘル…って、現代の病理をほとんど網羅してる。残りはアル中&ヤク中と性的逸脱くらいで、前者は芥川と太宰が、後者は谷崎と三島が、それぞれカバーしてる。三島はネトウヨにも親和性が高い。
これが、学校では教えてくれない日本文学の要点だったりして(笑)

mkt99さん (2014年6月4日)

佐藤史緒さん、こんにちわ。
コメントいただきありがとうございます!(^o^)/

主体性のない主人公・・・。確かに、よくもまあ明治にあって受け入れられたものだと思います。(笑)もっとイケイケな時代イメージがあるのですけどね。(笑)
佐藤史緒さんの主人公性格分析、面白いです。(笑)
こういうバランス感覚(?)というか、時代の先取りというか、流石、漱石先生ですね!
本来、文学に親しむということは、杓子定規な小・中・高の学校教育とは相反するものだとは思いますけどね。(笑)

藤首 亮さん (2019年5月12日)

mkkT99さん、おはよう
【令和元年5月12日午前5時~過ぎ】
明治は遠くなりましたが、今でも三四郎がすぐ隣にいて、僕も美禰子に思いを寄せるライバルです。
三四郎に先を越されたと感じたシーン
原口と言う画家の家にモデルとなっている美禰子に金を返そうと訪ねる。道を歩きながら「あなたに会いに行ったんです」
「ただあなたに会いたいから行ったのです」

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