旦那と妾奉公という古典的な状況設定の中に、人智のむなしさを込めた中編秀作。物語るようなわかりやすい文体の中に当て漢字の多用と、英語・フランス語といった外国語を織り交ぜるという鴎外ならではの、明治の香り高い文章になっている。
物語は高利貸しの末造一家、妾奉公することになったお玉一家、そして、学生岡田と「僕」周辺の大きく3つに分かれるが、特に末造と女房、お玉と高齢の父親の心情描写が優れていて面白かった。
才覚に優れた末造の思いに反し、しだいに別心するお玉。そして制御不能な女房。お玉は時を経ず図太くなって、学生岡田と心を通わせていく。そして、あの日あの時に投じられた思いがけない一球に全てが収斂していく。書名は人の思惑とは裏腹に状況が進展していく象徴なのですね。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
小説など
- 感想投稿日 : 2012年1月22日
- 読了日 : 2012年1月22日
- 本棚登録日 : 2012年1月11日
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