ガラスの街 (新潮文庫)

3.63
  • (32)
  • (76)
  • (74)
  • (9)
  • (4)
本棚登録 : 793
レビュー : 83
制作 : Paul Auster  柴田 元幸 
mkt99さん 小説など   読み終わった 

「そもそものはじまりは間違い電話だった。」

雑多な人々が暮らすニューヨーク。そこで孤独に生きる作家クインの身に起きた、まるで万華鏡のような物語です。出だしはハードボイルド・テイストと思いきや、次第にオカルト・ミステリー・テイストも加わって、これが映画ならぞくぞくするような展開なのですが、よほど上手く結末を持っていかないと、映画の観客には許してもらえないような・・・。(笑)
主人公のクインが様々な仮面を被り、幾重にもスライドする可能性がある個人という趣向はなかなか面白いです。また、人生を孤独に生きていると思いきや、お茶目ぶりや没頭していく様など性格設定的にもなかなか親しみが持てますね。(笑)それに登場してくる個性的な面々。破天荒な話ぶりの調査依頼主に加え、尾行対象の破天荒なふるまいにどんどんと物語に引き込まれていきます。そして深まる謎・謎・謎・・・。
繰り返される街の描写に、そこに行き交う人々、メシ屋の雰囲気にニューヨーク・メッツの話題など、書名のごとく透き通るように描かれる街・ニューヨークの片隅でクインが出くわした事件には、ジャズ・トランペットのBGMがよく似合っています。
物語の方はだんだんと錯綜の度合いを含めていき、ポール・オースター本人(?)が語るドン・キホーテ論とのパラレルな世界の中で、幾重にも施される主体の転回が読者を幻惑させ、一層、万華鏡の迷路の世界へ引きこまれていくかのようです。

世の中とそれまでの個から分離すると一体どこへ向っていけるのか・・・?謎なんてさして重要なものではないのかもしれない。

レビュー投稿日
2014年4月27日
読了日
2014年4月27日
本棚登録日
2014年4月11日
16
ツイートする
このエントリーをはてなブックマークに追加

『ガラスの街 (新潮文庫)』のレビューをもっとみる

『ガラスの街 (新潮文庫)』のレビューへのコメント

深川夏眠さん (2014年4月28日)

お邪魔します~。
柴田元幸氏の訳ではない、
角川文庫版「シティ・オヴ・グラス」を読みました。
こちらの柴田氏版をずっと気にかけながら未読ですが、
ともかくも、
初期ポール・オースター作品の雰囲気、
独特の不条理感はとても好きです。

nejidonさん (2014年4月29日)

mkt99さん、こんにちは♪
いいですね!ポール・オースターは好きな作家さんです。
特に【トゥルー・ストーリーズ 】などはとても好きです。
残念ながらこの本は未読ですが、レビューを読んで私も読みたくなりました。
ところでポール・オースターの【スモーク】と言う映画はご覧になりましたか?
mkt99さんのレビューを読みたいなぁと思って(笑)
「ハーヴェイ・カイテル」と言う俳優さんが好きで好きで、出演しているものを片っ端から観たときに出逢った作品です。
なんて、話がズレててすみません。

mkt99さん (2014年4月29日)

深川夏眠さん、いらっしゃ~い!(^o^)/
いつもコメントありがとうございます!

「訳者あとがき」によると、柴田元幸さん、版権の関係上できなかった翻訳が今回可能になって非常に喜んでおられるとのことでした。

確かにこの不条理感、何とも言えないですね。しかし、「訳者あとがき」にもあるように、このようなゼロリセットはむしろ快感かもしれません。自分もこんな感じでどこかに行ってしまえたら面白いのになあと思いました。本書のように汚い思いはいやですが・・・。(笑)

mkt99さん (2014年4月29日)

nejidonさん、こんにちわ。(^o^)/
いつもコメントありがとうございます!

ポール・オースターは人気がありますね!なので自分も読んでみようと思い、実は初読みです。(笑)今回読んでみて、まずは「ニューヨーク三部作」を制覇しようという気になりました。(笑)

ハーヴェイ・カイテルはいい俳優さんですね。僕も彼の出演作品はいくつか観たことがあります。『U-571』とか『ナショナル・トレジャー』とかで憶えていますが、特に『ピアノ・レッスン』なんかは印象深かったですね。
『スモーク』は先ほどいろいろとレビューを読んでみましたが、たぶん未見のような気がします。お薦めなら観てみますね!
そして、「レビュー」ですね!(^o^)

コメントをする場合は、ログインしてください。

いいね!してくれた人

ツイートする