死が最後にやってくる (ハヤカワ・ミステリ文庫 1-34)

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本棚登録 : 50
レビュー : 4
制作 : 加島 祥造 
mkt99さん 推理小説、ミステリー   読み終わった 

古代エジプトを舞台にしたアガサ・クリスティーの異色ミステリー。
夫が考古学者であったこともあり、クリスティーには中近東やエジプトなどの発掘ネタのストーリーが少なからずありますが、舞台そのものを古代エジプトに設定する作品は珍しい。
本作ではその古代エジプトの情景や生活ぶりを、メインのミステリーに彩りを添えるべく抒情たっぷりに描き出していてとても面白かった!
また、クリスティーが得意とする登場人物の性格の際立たせ方や心理状態の掘り下げ方も、この抒情たっぷりの古代エジプトという舞台に大変に上手くマッチしており、仮に殺人事件と謎解きをメインとしない普通の小説であったとしてもなかなかの出来栄えだったと言えるでしょう。

夫と死に別れたレニセンブは娘を連れて実家である墓守僧兼大地主の父インホテプのもとに帰ってきた。昔なつかしい家族や光景に浸る彼女。しかし、書記であるホリは、外見上はともかく内側から朽ち果てるものもあると彼女に指摘する。
そんなある日、北の領地から父・インホテプがナイルを下って帰ってきた。若く美しい妾のノフレトを連れて・・・。
これまで、長男ヤーモスと次男ソベク、そしてその家族たちは、父インホテプの専制的態度に抑圧されていて、みんな不満を溜め込んで生活していたのだったが、ここに新たな火種が投下された・・・。

クリスティーは本当に家族内のどろどろした状況と心理状態を描くのが上手いと思う。
特に、専制的な一家の大黒柱とそれに虐げる家族という構成を描かせると一品ですね。
何といっても身近に居そうで、あの人に似ているかも!と思わせるような人物設計と、とことん読者に共感を呼ぶような心理描写がたまらないです。(笑)
本作では特に登場人物の人となりが多彩に描かれていて、夫や弟嫁をいたぶることに喜びを見出す長男ヤーモスの妻サティピィとか、わが子愛でわが道をゆく次男ソベクの妻カイトとか、老齢に至りあらゆることやものに達観しているインホテプの母エサとか、おべっか使いでチクリ屋の召使ヘネットなど、何か現実感があり周りに居そうな人間たちに大いに魅せられました。

物語は半主役であり読者の視線であるレニセンブの都度の考えや感情が紡がれるとともに、一方で連続殺人事件が発生し家族内の異様な雰囲気の中で進行していきます。
ここで自分はというと、連続殺人であることが明白になった中ほどの事件で、ある程度犯人の目星はついたと思っていて、レニセンブと祖母エサ、書記ホリの三者がいちじくの木の下で会談した後では、その後の物語の推移まで予測がついたと思ったのですが、次と次の次の被害者は当たったものの、物語の推移はかなり外してしまいました。(笑)
しかし、犯人はやはり自分の思った通りだったので、推移の予想は外れはしたものの、まあ満足の得られる読後感でした。(笑)

ロマンと愛憎とミステリーを見事に融和させたクリスティーの意欲作であり佳作であったと思います。

レビュー投稿日
2018年5月17日
読了日
2018年5月13日
本棚登録日
2014年7月15日
13
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