ディクスン・カーの第3作目とのことです。
相変わらずカーお得意の怪奇趣味と不可能犯罪が冴え渡る作品となっています。
今回のお題は、髑髏に見える古城での焼身場面をライン川の対岸の別荘から目撃したというシチェーションの謎です。これにかつて髑髏城の持ち主だった魔術師マリーガーの謎の死亡事件が加わります。
謎を解くのはご存じ、フランスはパリの予審判事”魔王”アンリ・バンコランです。
もうこの組み合わせだけでわくわくしてきちゃいますね!
そして、バンコランのライバルとして登場するのは、ドイツの誇る主任判事ジークムント・フォン・アルンハイム男爵です。
全体の雰囲気が重苦しく重厚に描写されているので、否が応にも小説の世界に深くハマり込んでいきます。ただ、訳者があまりにも意識し過ぎたためか、日本語訳としてはかなり大仰な表現の箇所がいくつもあり少し読みずらい部分も多々あるのですが、その内、気にならなくなりました。
重厚な雰囲気に見合った髑髏城という大掛かりな舞台装置が用意されていて、別荘に滞在する容疑者たちもそれぞれが怪しい言動を行うので、ますます気分も高まっていきます。ただ、重厚な雰囲気を盛り上げるための描写として、時折、滞在客のバイオリニストが演奏を行うのですが、曲目といえば『アマリリス』であったり『ハンガリー舞曲5番』であったりして、これって、むしろ逆効果の癒し系とか楽しい音楽なんじゃ・・・!?(笑)
こうした雰囲気の中で行われるバンコランとアルンハイム男爵との知恵比べというか会話の駆け引きについては、大いに魅せられました。ただ、ここまでしてライバルを煽っておきながら、ラストのアルンハイム男爵の取り扱いにはちょっと納得がいかなかったですね。(笑)
終わってみて、冷静に考えれば、えーっ!という設定もあるにはあるのですが(第一、あの状態で果たして担ぎ上げれるのだろうか・・・?)、これも全て大掛かりな舞台装置と雰囲気の中で何となく了解できたとも言えます。(笑)
カーの魅力が味わえる一作といって良いでしょう。
- 感想投稿日 : 2016年2月11日
- 読了日 : 2016年2月8日
- 本棚登録日 : 2016年1月17日
みんなの感想をみる