科学者は、なぜ軍事研究に手を染めてはいけないか

  • みすず書房 (2019年5月25日発売)
3.45
  • (1)
  • (5)
  • (4)
  • (0)
  • (1)
本棚登録 : 120
感想 : 19
4

 現代日本における「軍学協同」を徹底批判する立場で論陣を張ってきた著者による警世の書。
 「デュアルユース」「ミックスユース」を隠れ蓑としながら、防衛予算を使った研究を是認しようとする風潮に対して厳しい問題提起を行っている。とくに第一次・第二次世界大戦における科学者の戦争協力の経緯と、国際社会における戦争違法化に向けた動向とが背馳してきたという指摘は決定的に重要。著者の見立てに従えば、科学者たちは一貫して、国際紛争の解決手段として「戦争」を認めない、という理念を裏切る方向で行為してきたことになる。

 また、2015年に導入された防衛装備庁による「安全保障技術推進制度」にもとづく研究の問題点が詳しく記されたことも勉強になった。防衛装備庁はじつに巧妙に、ホンネとタテマエとを並記しながら、研究者の「良心」が痛まないような甘言を散りばめながら、研究者・研究機関を取り込もうとしている。「学」が「軍」の召使いにならないように、というのは、もちろん人文系の研究者にも当てはまる。
 なぜ、何のために学ぶのかという根本に立ち返って、自らを省みるところから始めなければならない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 科学技術
感想投稿日 : 2023年5月18日
読了日 : 2023年5月15日
本棚登録日 : 2023年5月15日

みんなの感想をみる

ツイートする