なぜ戦争をえがくのか: 戦争を知らない表現者たちの歴史実践

  • みずき書林 (2021年2月22日発売)
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はじめに
小泉明郎 逃れようのないものへの違和感や怒り
諏訪 敦 不在を、どこまで〈見る〉ことができるか
  〈旅の記憶 マーシャル諸島共和国〉
武田一義+高村亮 そこにいたであろう人を、みんな肯定したい
遠藤 薫 不時着と撤退戦/いつもどうしても含まれてしまうこと
  〈旅の記憶 ヴェトナム〉
  〈旅の記憶 韓国〉
寺尾紗穂 ニーナたち、マリヤンたちの《コイシイワ》
土門 蘭+柳下恭平 書くことでたどり着く、想像の外へ
後藤悠樹 いつも間に合っていないし、いつも間に合っている
小田原のどか 失敗の歴史、破壊される瞬間と、眠ってしまう身体
畑澤聖悟 四隻の船と、青森から航路をひらく
庭田杏珠+渡邉英徳 特別な時間のおわりと、記憶をたどる旅のはじまり
あとがき

 マーシャル諸島で命を落とした日本兵の日記の言葉と出会い、ことばが現代に生き直されていく時間を描いたドキュメンタリー映画『タリナイ』の監督が、現代の日本をベースに戦争記憶にかかる歴史実践を続ける表現者たちに行った連続インタビューの記録。注目の版元・みずき書林さんからの刊行物でもある。

 不勉強で知らない方、作品を未見の方も多く取り上げられていて、まずは貴重な情報に感謝。その上で、絵画、写真、音楽、演劇、彫刻といった各ジャンルで戦争をテーマとする活動を続ける表現者たちが、それぞれ徹底して調べ考え、そこからさらにそれぞれのメディウム(媒体)で表現の試みを重ねていることが引き出されていて、感銘を受ける。歴史の実践者という意味では、研究者・教育者も同様である。しかし、もう一つ大事なことは、研究者・教育者の場合、こうした表現者の企図に応えるだけの調査と考察の深度と強度が必要だ、ということだろう。そう思って、自分の気持ちを引き締めた。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 歴史
感想投稿日 : 2021年6月6日
読了日 : 2021年6月6日
本棚登録日 : 2021年6月6日

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