弱いロボット (シリーズ ケアをひらく)

著者 :
  • 医学書院 (2012年8月24日発売)
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ロボットといえば、人間の代わりに何の作業をしてくれるものなのか、どのように便利なのかと性能や機能、または、どれだけ人間らしいか、を見るものだと思っていた。そして、医学書院のシリーズ「ケアをひらく」でロボットといえば、介護の代わりのロボットなのか、話し相手、遊び相手の代わりになるロボットの話なのか、などなど想像してしまったけれど、これは違う。目から鱗の連続だった。まず、人間が「何気なく」している会話は、まずロボットにはできない。その「何気ない」に焦点を当てることから始まるこの本書。ロボットは言い淀みをエラーとして処理してしまうが、人は言い淀むことを前提に話し始めるのだ。会話はお互い相手の不足分を支えたり、不足分を委ねられたりして進行する。相手が返してくれると思って言葉を発し、返してくれなければ不安になるし、返さなくてはならない責任も感じるものである。そして、ただ歩くという行為でさえ、地面に委ね、地面に支えてもらっているという不安定さがあると、本書にはある。また、「支えてあげるもの」「守るもの」があって、人は成長することがある。ただ色を指摘するだけのロボット、ゴミを集めたいのにゴミを拾えないロボット、それらに対して、今まで弱者でしかなかった人が、教える側にまわって、少し変わっていくし、そんなロボットが人と人のコミュニケーションの触媒となっていく。人は1人では生きてはいけない。改めてそれを、ロボットという無機物を通して再確認する1冊だった。

読書状況:未設定 公開設定:公開
カテゴリ: 書籍その他
感想投稿日 : 2013年3月25日
本棚登録日 : 2013年3月24日

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