緑の家(下) (岩波文庫)

  • 岩波書店 (2010年8月20日発売)
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本棚登録 : 539
感想 : 50
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 ラテンアメリカの小説。ペルーを舞台に時系列をゴチャ混ぜにした五つのストーリーが断片的に語られる。一つのストーリーの中でもしばしば、何の前触れもなしに記憶がフラッシュバックしてその場にいない人物が話し出したり、ほとんど行替えのない文章が続いたり、かなり実験的な小説になっている。
 読みにくいものの、各々の話が繋がり出してからは面白かった。むしろその読みにくさが、この本のよさだという気がする。アマゾンのジャングルの中で記憶がグチャグチャになるような感覚。実験的な小説というのは世の中に腐るほどあると思うが、それが雰囲気にマッチしているという意味では、この小説はお手本と呼べるのだろう。
 それにしてもペルー・アマゾンという場所はすさまじい。近代的な町、中世的な修道院、原始的なインディオの村。その三つが隣り合って存在し、その中でかなり露骨な搾取や思想の押し売りが起こる。しかし、その不穏さには何か得体の知れぬ魅力もある。三つの環境を行き来した女性ボニファシアの人生を思うと、そう思わざるを得ない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2014年3月17日
読了日 : 2013年9月8日
本棚登録日 : 2013年9月8日

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