1949年発表、三島由紀夫著。青年が幼年の頃から現在までを振り返り、自己に巣食う性的倒錯を暴き分析する。
初めて三島由紀夫を読んだが、まず文体がものすごかった。猛烈な修飾が覆う文章と世界文学や神話からの巧みな引用。よく言えば濃い。悪く言えば読みにくい。個人的に、文章表現としては今まで読んだ本の中で最高峰のものの一つだと感じるが、現代の日本ではこんな文章は大衆にウケないし、そういう作家は二度と現れないだろう(それは単に古い時代の文章だからというわけではなく)。
この小説のテーマとして同性愛がよく取り上げられているようだが、読んでみるともっと普遍的なものを感じる。というより、おそらく誰しもが主人公のような性的倒錯を持っているのだろう。ただこの主人公は必要以上に自分の性的倒錯に自覚的であり、独りよがりに分析しすぎるきらいがあり、その果てに苦悩に陥ったすぎない。しかもその苦悩の裏には青年期特有の露悪的な自己愛が隠れている。「露悪的」であることと「隠れている」ことの自己矛盾。そこから湧き出す苦悩。それこそがまさに「仮面の告白」なのではないだろうか。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
小説
- 感想投稿日 : 2013年12月24日
- 読了日 : 2013年12月20日
- 本棚登録日 : 2013年12月24日
みんなの感想をみる