はたして『銀河鉄道の夜』へのオマージュなのだろうか……?忌まわしい記憶とともに抹消された「まぼろしの廃線跡」をめぐるパラレルワールド譚。ふだんこの手の小説に縁がないため、こうした設定が古いのか新しいのかはまったく判らず。
人の一生というのは鉄道に乗るのと似ている、と鉄オタの平間さんは語る。「どこへでも自由に行けるかのように見えて、じつはそれほど自由があるわけではない」。すすむべき線路は一本ではなく、ところどころに乗り換え駅もあるけれど、うっかりすると「目指しているのとは全くちがう場所へ連れていかれてしまう」のだ。そんな平間さんが、ある日、忽然と姿を消してしまう。そして若い友人である菜月さんと主人公であるぼくは、わずかな手がかりをもとに消えた平間さんを捜して「まぼろしの廃線跡」をめざすのだが……。
ラスト、主人公の抱く不安は、菜月さんへの愛情と表裏一体をなすものであり、その意味で、大切な誰かを愛するということはまた、そこから逃げることのできない一本のレールの上にあって不安とたたかい続けることでもあるのだろう。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
未設定
- 感想投稿日 : 2013年6月12日
- 読了日 : 2013年6月12日
- 本棚登録日 : 2013年6月12日
みんなの感想をみる