戊辰内乱期の社会 佐幕と勤王のあいだ

  • 思文閣出版 (2016年1月15日発売)
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 戊辰戦争にあたって、「朝敵」とされ否応なく動乱の渦中に巻き込まれた譜代藩や旗本、あるいは旧来の政治秩序にルサンチマンを抱えて内戦に自己実現を期待する下級の公家や神職といった、通史では等閑視されがちな属性の人々の動向を分析している。「佐幕」から「勤王」への意識変化は政治状況に規定され直線的ではなく、他方で「佐幕」と「勤王」が本来対立する概念として認識されてはおらず、それ故に徳川幕府が天皇から切り離された時に、徳川側は新政府に対抗する「正当性」を確立できなかったことを重視している。

 個人的には本筋の議論よりも、「補論」の榎本武揚処分問題についての分析(榎本軍に参加したフランス人の処分問題と連動し、終始国際社会の眼差しを意識しなければならなかった、榎本への「寛典」も岩倉使節団の条約改正準備交渉への配慮)が斬新で興味深かった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 歴史(近代・現代)
感想投稿日 : 2019年5月31日
読了日 : 2019年5月31日
本棚登録日 : 2019年5月31日

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