明治維新後の旧幕臣の行方を具体的に跡付けている。維新後の幕臣については、経済史学ではその身分解体と経済的没落を、社会学ではそのエトスや教養の有利性を強調する傾向があるが、本書では数々の実例から容易に類型化しえない多様性を明らかにしている。興味深いのは、すでに幕末期には農民や商人の能力主義的な士分登用や冗職の「リストラ」による身分再編が進行しており、維新後に活躍する旧「幕臣」には累代の武士よりも、こうした身分流動の中で台頭した「にわか武士」が多い傾向があることで、人的資源の点でも「近代」は旧幕府に内在していたことがわかる。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
歴史(近代・現代)
- 感想投稿日 : 2016年11月6日
- 読了日 : 2016年11月6日
- 本棚登録日 : 2016年11月6日
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