セカンド スプリング

著者 :
  • PHP研究所 (2008年2月19日発売)
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本棚登録 : 21
感想 : 3

 ビーチ・ボーイズが来日した季節に、この本を読んだのも何かの縁だろう。物語のなかでブライアン・ウィルソン『スマイル』の話題が出てくるから。ポップスの歴史に名を残す幻の名作の復活、ということで。
 その復活をきっかけに、主人公を中心とする昔の人間関係が動き出す。今の暮らしを反映しながら、思い出話から新しい話題が生まれ、当然「焼けぼっくい」的な展開にもなる。
 ただ、それだけの話。それだけに読者は共感は覚えても、それ以上の感情が湧いてこない、ある種の空虚さが残る。

 ビーチ・ボーイズ=ブライアン・ウィルソン的な文脈で、このグループを語りたがる人は多い(この本にそういう記述はない。念のため)。そういう人に対して、個人的に嫌悪感を覚える。
 なぜなら、彼がいなくてもグループは存続し作品は発表され続けていたから。
 なぜなら、彼がいなくても血縁関係を中心にしたメンバー間でのいざこざや苦悩がバンドの歴史の中でドロドロと積み重ねられていったから。
 彼がいようがいまいが、ショービジネスは続いていく。メンバーにサーファーが誰一人いないにも関らず、カネに塗れながらセックス・ドラッグ&ロックンロールを繰り返す人生の重みがそこにあったのだろうと思う。「Fun, Fun, Fun」と軽快で楽しい世界観の裏には。
 だからこそ逆に、彼らは今でも“偉大なロックバンド”として名をはせているのだろうけど。

 人生のかたちは色々だと思う。ただ、軽々しい共感や同情を超えた個々の重みが、いつだって誰にだってあるのではないだろうか。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2012年8月28日
読了日 : 2012年8月28日
本棚登録日 : 2012年8月28日

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