吉野葛・蘆刈 (岩波文庫 緑 55-3)

著者 :
  • 岩波書店 (1986年6月16日発売)
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本棚登録 : 305
感想 : 26
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美しく広がる景色やその辺りの生活が目に浮かぶよう。この本を伴って、作中の辺りを散策してみたい。
作中に取り上げられるお能や歌舞伎の番組「二人静」「義経千本桜」、「増鏡」の和歌「見わたせばやまもとかすむ水無瀬川ゆふべは秋となにおもひけむ」などがより一層イメージを膨らませてくれる。
「吉野葛」の義経千本桜の河連法眼館(四ノ切)は、忠信に化けていた子狐こと源九郎狐が、鼓にされた親たちを慕って鼓を持つ静に付き従っていたという話で、作中でも母を慕う津村の気持ちとリンクして触れられています。ただ源九郎狐は哀れで風情がありますが、津村の母への慕情はあまり気持ち良くない。
母の形見の蒔絵の本間の琴の描写は美しく、頭の中でとても美しい琴が想像されるのですが。
「蘆刈」はより一層、月、夜の月のイメージがとても冴え冴えと美しい。川の中州での月見、語られる池の上の泉殿での月見、きっと美しい月光でしょう。
ですがこちらも、肝心の本筋、お遊とお遊への男の父親の想い、代わりに父親が結婚したお遊の妹のお静との辺りは、理解できないというか感情移入できませんでした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 文学・評論・小説
感想投稿日 : 2017年8月7日
読了日 : 2017年8月4日
本棚登録日 : 2017年7月2日

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