フューチャーマチック

  • KADOKAWA (2000年5月1日発売)
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本棚登録 : 111
感想 : 9
3

「あいどる」に続く「廃物都市3部作(ほんまかいな)」の完結編。今作は「ヴァーチャル・ライト」「あいどる」の登場人物の総結集という感じで、懐かしい顔をみることができる。
「あいどる」では脇に回った「ヴァーチャル・ライト」の主人公であったライデルが再度主人公に。
「ヴァーチャル・ライト」でロスの街を自転車で駆け巡っていたシェヴェット嬢も主人公。
「ヴァーチャル・ライト」「あいどる」そして今作と皆勤賞の大阪大学教授・山崎が、「あいどる」で日本へ渡ったレイニーを訪ねることから、今回の物語は始まる。
レイニーは、彼の受けたある外科手術の後遺症として発病する「誰かをストーカーのように付け回してしまう症候群」が発病したと恐れ、また彼の能力を求める輩から逃れるために、なんとダンボール・ハウスで生活していた。

「ヴァーチャル・ライト」の舞台であったロスアンゼルスの橋が今回もその舞台となる。「橋」は大地震がロスを襲った時に逃げてきた人々が橋の上に家を築き、街を作り上げてしまったという、いわゆるスラム街として描かれている。
その「橋」の生活をよく知りたい方は「ヴァーチャル・ライト」をご一読願う。

レイニーは歴史の終わりをその能力で予言する。それを阻止するべく、あいどるをロスへ送りこむ。歴史はどうなるのか、あいどるはそれをどう変えるのか。

…とはいうものの、わたしはあまりこの作品、好きではない。
とても好きな作家なので、面白くないと思いたくないのだが、今の段階でわたしはどうも面白いと思えなかった。
それはきっと「歴史の結束点」などという大仰なテーマと、それに影響を及ぼしている(と解説にあった)人物の魅力が伝わってこなかったからだ。
なんだか、独り善がりに物語が進んでいく感じがした。
他のこの著者の作品は、読者をどんどん先へ先へと無理やり引っ張っていくような物語の先走り感があったのだが、それが今作ではどうも読者はおいてけぼりを食っているような感覚がある。
なんだか、「結束点」云々という小難しい話についていけない読者は読んではいけないような感じだ。

ともあれ、そのテーマ以外での物語感は相変わらずテンポ良く、面白い。また時間がたってから、読んでみようと思う

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: サイバーパンク
感想投稿日 : 2014年8月21日
読了日 : 2004年3月21日
本棚登録日 : 2014年8月21日

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