海と毒薬 (角川文庫)

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本棚登録 : 1295
レビュー : 172
著者 :
制作 : 駒井 哲郎 
morikaraさん 遠藤 周作   読み終わった 

恥ずかしながら遠藤周作の小説を読むのはこれが初めて。
相川事件については詳細は知らず、あったという事実だけしか認識していない状態だったけれども、いつかは読まねばーと思い、ようやく達成できた。

平野氏の解説にあった「罰を恐れながら罪を恐れない日本人の習性」を浮かび上がらせるために、普通の生活を送る私たちが想像しやすいよう、小説という体裁をはずれず、”派閥争い”や”恋愛”などを織り込み、結果小説としても問題提起としても成功しているところに作者の力量を感じた。

悩み続ける勝呂に寄りそっていたはずが、いつの間にか戸田の感情に共感することもあり、読んでいる間何度も混乱に陥った。
恐ろしいことに、たしかに戸田の言うとおり、この時代、こういう状況下に置かれたら私は罪を犯すだろうと平然と思っている時間があったからだ。

それでも何となく、いや、多くの人がこうした場合流されて戸田や浅井のような行動を取るんじゃないか? と思ったりもした。
しかし、果たして本当にそうだろうか、日本人が神を持っていないということも大きいんじゃないか、いや神とは何だ? とかぐるぐるし始めて、結局答え出ぬままパンクして終わってしもうた……

今でもまだ印象に深く残っているのは、小説や詩にはからきしの勝呂がよく心に浮かばせるという「羊の雲の過ぎるとき~」詩だ。
私も詩の教養はさっぱりだけれど、あれを読んだとき何となく救いを包含した悼みの詩だという気がして、だから勝呂はあれを心に浮かばせたとき、大きな偉大なものに抱かれ、少しでも救われるような気がしていたんじゃないかと思っていた。
だからこそ、最後に罪を得た勝呂があの詩を呟けなかったことに私も打ちのめされ、まだ黒い海を漂っているような感じなのであったー。

レビュー投稿日
2013年3月11日
読了日
2012年9月10日
本棚登録日
2012年9月23日
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