一体、何なんだっ、この小説は……! と思わず悶えてしまうほどのボリュームにただただ陶酔しきった。
この読み終わって、一彰の、そして李歐の間に常に寝そべっていた距離にもう苦しくならなくてよいのだ! と思う反面、まだ読んでいたいという葛藤に苛まれ苛まれしてもう……。
それでも李歐よりも、どちらかといえば一彰という、初めから運命の歯車の中に組み込まれでもしていたかのような人生を送った男の物語としての印象が強い。
勿論、手紙や口頭で伝えられる李歐の武勇伝などにも奥行きがあり、滲み出るハードボイルドな格好良さの裏づけもある。
だが、それよりも一彰の人生のほうをより思ってしまうのだ。
きっとそれこそ李歐という男が一彰の心の中にいたからなのかもしれん。
とにかくこんなたった一冊の本に書かれた人生なのに(読むのは大変だったけど)、胸が張り裂けそうで、軽く50歳くらい歳取らされたような、とてつもなく長い人生を私まで生かされたような感覚がずっと残っている。
それが何とも苦しく、幸せでならない。
唐突だった「守山工場」章が、章が進むごとに重みを増してきて、高村薫という作家の力量を見せ付けられたような気がした。
あと最後の李歐の台詞 「おい、これをやろう」 で、なんかもー全部持ってかれっちまった、魂ごと。
ほんと高村薫には敵わねーよ!
あんまり李歐にぞっこんになってしまったので、香港マフィア映画をたくさん借りてきてしまった。
恐ろしい男だよ、李歐さまは……!
惚れたって言えよおおお!(まだしばらくは興奮のさなか……
- 感想投稿日 : 2011年7月1日
- 読了日 : 2011年6月27日
- 本棚登録日 : 2011年6月27日
みんなの感想をみる