デジタルエコノミーの罠

  • NTT出版 (2020年11月25日発売)
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感想 : 19
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メディア(放送、新聞)分野において、いかにデジタル化(オンライン化)が強者へのさらなる権力集中をもたらしているのかを定量的、実証的に示した本になります。インターネットの黎明期には、多くの有識者が「これでメディアの民主化が進む、つまり誰もが情報発信の機会を得られて、ローカルニュース、ハイパーローカルニュースでネットは繁栄していくだろう」というような主張をしていたわけですが、著者は、その主張が誤りであるということを実際のデータで示したわけです。本書のキーワードは「べき関数」でしょう。べき関数の特徴と言えば、少数の強者(ヘッド)とそれ以外の長い参加者(ロングテール)が組み合わさった形なわけですが、確かにこれまでの風潮では、ネットが生み出すロングテールに議論が集中していたわけです。しかしふたを開けてみれば、ロングテールも確かにあるけれど、それ以上にヘッド部分がさらに強くなるメカニズムをネットは持っているのだということです。

このように本書はどちらかと言えばネットに対する悲観的なトーンが8割くらいを占めてはいますが、完全に打つ手がないわけではありません。どうすればロングテールが強くなれるのかについてのヒントも本書の中に書かれています。その一つが、我々ユーザーのこだわりが強くなることです。私はこの点に関して日本には光明がある、つまり日本であればロングテールのサイトにも勝機はあると感じました。逆説的ではありますが、同一民族の塊である日本人のなかにはサブカルチャーがかなり広範囲かつ深く存在していて、多民族国家である米国以上の広さと深さがあると思っています。サブカルが深く広い日本では、グーグルやフェイスブックが提供する当たり障りのない情報には感銘を受けません。トラフィック数は少ないかもしれませんが、コアなユーザーを集める超ロングテールだが長寿命というサイトが日本にはかなりあるのではないかと思い、そのあたり誰かが日米比較の実証研究などしてくれたら面白いのにと思いました。「オタク文化」が栄えている国ほどネットの民主化が進む、なんていう結論になると面白いのですが。本書は多くの気づきが得られる良書でした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年5月6日
読了日 : 2021年2月28日
本棚登録日 : 2023年5月6日

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